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2006年8月25日 (金)

ミドリガメFAQ(1997年版)(最終更新2006-09-09)

 で,いよいよ「ミドリガメFAQ」(FAQ=Frequently Asked Questions,よくある質問と答え)です。1997年当時,飼育歴わずか2か月目にして作ってしまったものです。疑問は次々と出てくる,そしていろんな本を読みあさったものの本によって違ったことが書いてある,疑問ますます膨らむ,そんな中から作ったものです。さすがに9年もたつと古くなった部分や,この9年の飼育で自分なりに判ってきたこともあります。とはいえ,この9年で発売された新しい書籍の該当情報を反映させるのも手間なので,とりあえず最低限の修正を踏まえたものを掲載します。

2006-08-24 懶道人(monogusadoujin)

【変更履歴】
2006-08-24 ブログ掲載。直後に一部訂正。
2006-09-09 一部訂正。「我輩は亀である 名前はもうある」→「吾輩は~」。
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目次
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【1】クレーンゲームでミドリガメを手に入れてしまいました。どうしたらよいでしょうか?
【2】クレーンゲームで手に入れたミドリガメですが,なんだか変です。病気でしょうか?
【3】ミドリガメって本当に大きくならない亀ですか?
【4】ミドリガメってエレガンス?
【5】甲羅長はどの部分を計るのですか?
【6】水槽はどのくらいの大きさのを用意したらよいでしょうか? 材質は?
【7】水はどの位の深さまで入れたらよいでしょうか?
【8】エサをなかなか食べてくれません。
【9】どんなエサがよいでしょうか?
【10】エサを与える頻度はどれ位がよいでしょうか?
【11】水温はどの程度がよいでしょうか?
【12】ヒーターにはどんな種類があるのでしょうか?
【13】ヒーターの細かい温度調整機能って必要ですか?
【14】甲羅干しって必要ですか?
【15】甲羅干し用の小島はどんなのがよいでしょうか?
【16】スポットライトはどんな点に気をつけたらよいでしょうか?
【17】陸地と池の割合はどの程度がよいでしょうか?
【18】底砂は必要ですか?
【19】水草は必要ですか?
【20】亀も溺れることがあるって本当ですか?
【21】フルスペクトルライトって何ですか?
【22】ガラス越しの日光浴は効果ありますか?
【23】フィルター(濾過装置)はどの程度有効ですか?
【24】フィルターにはどんな種類がありますか?
【25】フィルターを使うときの注意点は?
【26】衛生面で注意することはありますか?
【27】掃除はどの程度の頻度で行えばよいですか? またその手順は?
【28】1つの水槽に複数飼育する点での注意点は?
【29】1週間程度の帰省・出張等の留守時はどうしたらよいか?
【30】亀を帰省先にもって帰る(移動する)には?
【31】留守中亀をあずかってくれるところは?
【32】水槽でなく屋内(陸上)で,室内ペットとして飼うことは可能ですか?
【33】オスとメスはどうやって見分けたらよいでしょうか?
【34】冬眠させるべきかさせないべきかの判断は?
【35】冬眠させるときの注意点は?
【36】繁殖させるにはどうしたらよいか?
【37】生んだ卵を孵化させるためには?
【38】事情により飼いきれなくなってしまいました。自然に帰してもよいでしょうか?
【39】最近亀に夢中です。世の中には「ミドリガメ症候群」なるものがあると聞きました。不安です。
【40】ミドリガメ飼育に役立ちそうな本にはどんなものがありますか?
【41】病気とその対処法
【42】水は水道水を使えますか
【43】噛みつかれた
【44】ミドリガメって悪者ですか?
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【1】クレーンゲームでミドリガメを手に入れてしまいました。どうしたらよいでしょうか?

 まず,すぐにカプセルの蓋を開けて空気を入れてください。密閉状態なので窒息死寸前の可能性が考えられます。次に帰宅したら,も少し広い容器にとりあえず移してください。バケツ,たらい,なべ等,なんでも結構です。狭い空間で不潔になってますので,最初によく洗ってあげるとよいでしょう。手足の付け根の部分に,カプセルに入っていたプラスチックの小球(底砂代わり)がはさまっている場合がありますので,その場合は取り出してあげてください。また,プラスチックの小球は,壊れ易く大きさも不揃いで,綺麗ではありますが,役にたちませんので,思い切ってそのまま捨ててしまって結構です。
 清潔にしたところで,その入手個体をよく観察します。痩せすぎで水に沈めない場合や,呼吸器系の病気にかかっている場合(肺でバランスをうまく取れず,体を傾けて泳ぐ),皮膚や甲羅に感染症を起こしている場合(正常な脱皮の場合は皮がむけたところが綺麗)があるからです。何らかの病気にかかっていることが認められた場合には,その後の飼育に気をつかう必要があります。
 落ち着いたところで器材を揃えます。まずはちゃんとした水槽を。次に甲羅干し用の小島やブロック。体を乾燥し皮膚病を予防すると同時に消化を助けるための日光浴の熱源としてのスポットライト(レフ球等)。甲羅・骨格形成に不可欠なビタミンD3を形成するのに必要な紫外線を得るためのフルスペクトルライト。点灯時刻を自動化するためのタイマー。冬場なら水を加温・一定温度に保つためのヒーターやサーモスタット,温度計。水の汚れを緩和したいならフィルターとポンプ,水質調整剤等。そして,カプセルに付属してきた餌(テトラ レプトミン)では2週間ぐらいしか持ちませんので,追加の餌を買う必要があります。
 どうですか? 思ったより費用がかかるでしょう!
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【2】クレーンゲームで手に入れたミドリガメですが,なんだか変です。病気でしょうか?

 どのように変なのでしょうか? とりあえず考えられる症状等を以下に書いてみます。が,正しい診断と治療は専門の獣医さんが一番詳しいので,それをお忘れなく。

(1) 水に沈むことが出来ない → 痩せすぎ?
(2) 体を傾けて泳ぐ → 呼吸器系の病気。肺でバランスをうまく取れない
(3) クシャミやぜいぜい言う → 呼吸器系の病気で重傷
(4) 甲羅が柔らかい → クル病。カルシウム,ビタミンD3(日光浴で生成)の不足
(5) 目がはれている → ビタミンAの不足。または不潔による細菌の感染症
(6) 皮膚(首筋,手足)に白い斑点がある → 水カビ等の感染症
(7) 皮がめくれている → むけた後が綺麗なら正常な脱皮。変なら感染症の疑い。
(8) 甲羅の境目が茶白色で腐食しているみたい → 感染症の疑い。黒化なら正常かも。
(9) エサを食べない → 温度(水温)が低く食欲がおきない

ちなみに,私がクレーンゲームで入手した2個体は,上記のうち(1)(2)(4)(6)(7)(8)(9)の状態でしたが,約1か月で(1)(2)(4)(6)(7)(9)は完治しました。(8)についてもその後治りました。
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【3】ミドリガメって本当に大きくならない亀ですか?

 小さいままでいるような遺伝子操作は行われていないはずですので(^^),やはり大きくなります。しかも結構急激に。
 「ミドリガメ」は昔(1966年)は「コロンビアクジャクガメ」(Colombia Slider,学名:Trachemys scripta callirostris)を指していた時期もあったそうなのですが(*1),現在では「ミシシッピーアカミミガメ」(Red-eared Slider,学名:Trachemys scripta elegans)を指します。「ミドリガメ」は種の名前ではなく商品名なのです。
 冬眠させず,加温して年中快適温度で育てた場合,誕生(孵化)から1か月後で甲羅長約3cm,体重約9グラムの個体が,1年で甲羅長約7.5cm,体重120グラム,2年で約13cm,体重約250グラム,そして成熟後は(オスは孵化後2年~2年半で成熟,メスは2年半から3年半で成熟),年0.5cmぐらいの割合で,一般には13~20cm,最大約25~30cmぐらいまで成長する,とのことです(*2)(*3)。ニフティ・ペットフォーラム「甲羅同盟」の「亀測」(毎月自分の飼っている亀の甲長,体重を報告しあう企画)を傾向をみても,最初の1年で 4~5cm から 10~16cm に成長,2~10年目で 15~23 cm程度,といったところで,大体似たような結果になっているようです。ちなみに,「亀測」の結果を元に,1996年7月から1997年8月の14か月分のデータを使用して(データ件数 222件),Excelで近似曲線を計算してみますと
【アカミミガメの 甲羅長 L(cm) と 体重 W(g)の関係】
   W = 0.1500 L^3   ※ Lの3乗に比例
といった式が得られ,甲羅長30cmの個体の体重は約4キログラムという計算になります。結構重いですね! 大きくなると,メラニズム(黒化)を生じ,次第に緑色が失われます。オスほど早く体色変化します。また,オスとメスではメスの方が大きくなります。
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【4】ミドリガメってエレガンス?

 学名に「elegans」(優雅・優美)を含むカメには,以下のようなものがあります。
   (a) Geochelone elegans(ホシガメ)
   (b) Testudo elegans(ナガイシガメ)
   (c) Trachemys scripta elegans(ミシシッピーアカミミガメ)
(c)(英語名はRed-eared slider)の幼体がミドリガメな訳です。カメ目ヌマガメ科に属し,
   Trachemys  :スライダーカメ属
   scripta  :アカミミガメ
   elegans:ミシシッピーアカミミガメ
のような命名構造になっています(*4)。「emys」は「亀」を意味します。「Scripta」「Scriptus」は,「刻んだ,書き付けた」といった意味で,おそらくは「アカミミ」の紋様の部分を指しているのでしょう。「trach」についてはまだ調べていませんが,「trace」(跡,足跡,轍),「trche-」(気管,呼吸管,導管),「Track」(軌道,跡,轍)(英語)いずれも「跡」に関係する言葉で,これが英語の属名(slider)を意味するのはまず間違いないと思うのですが・・・。
 「Trachemys scripta elegans」の命名は,1839年,Wied 氏によるものです(*4)。また,スライダー属アカミミガメ(Trachemys scripta,1792年,Schonepff)には,ミシシッピーアカミミガメ以外にも亜種が15あり,ちなみに,かつて「アマゾンの緑ガメ」と呼ばれた「コロンビア クジャクガメ」(Trachemys scripta callirostris)もアカミミガメの亜種です(*1)(*5)。
 「T.F.H.飼い方マニュアルIV スライダーガメ」(*5)によると,「スライダー」を巡る属の分類には変遷(混乱)があったそうで,1857年初めてTrachemys属に入れられた後,Pseudemys(クーター)属,あるいは,Chrysemys(ニシキガメ)属に入れられたりした後,最終的に1986年にTrachemys属に戻り,現在に至っているとのこと。各種書籍・資料を探す際,この点には注意した方がよいようです。実際,1987年に日本で出版された「動物大百科 第12巻 両生・爬虫類」(*13)では,1冊中,別々のページで「Chrysemys scripta elegans」,「Pseudemys scripta elegans」の2つの学名が出てきますが,「Trachemys scripta elegans」は掲載されていません。(それにしても同じ本の中でぐらい学名は統一してほしいものです。)
 スライダー属(ミドリガメ,すなわち,ミシシッピーアカミミガメを含む)を他の属(クーター属,ニシキガメ属)の見分け方(特徴)は,
   スライダー    |クーター     |ニシキガメ      
   ---------+---------+-----------
   ・大きくなる。   |大きくなる。   |小型(15cm越えない)。
   ・背甲は高め。   |背甲は高め。   |背甲は低め。     
   ・背甲色は成体で  |背甲色は成体で  |背甲の縁は明るい赤色 
    茶・緑褐色。   |茶・緑褐色。   |または黄赤色。    
   ・第2肋甲板に縦の |第2肋甲板に黄色の|腹甲は黄色。暗色の線が
    黄色の線。    |C状模様又は縦縞。|ある場合も。     
   ・縁甲板はギザギザ。|縁甲板はギザギザ。|縁甲板はなめらか。  
   ・顎に牙状突起なし。|顎に牙状突起あり。|顎に牙状突起あり。  
   ・下顎は丸い。   |下顎は四角い。  |           
   ・目の後ろに,頭部の|目の後ろに大きな |           
    縞模様と区別できる|斑点が見られること|           
    黄か赤の太い模様が|は決してない。  |           
    有る。      |         |           
((*5)(*14) の文を元に表形式に表示),といったことらしいのですが,結局のところ「他の多くのカメと同様,甲羅や頭部の特徴を以て属を正確に分類することは不可能である。その種を特定することで初めて,どの属であるかを断定することが出来るのである。」(*14)とのことで,鶏が先か卵が先か的な妙な印象を受けるところがあります。分類学という学問の難しさなのかもしれません。
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【5】甲羅長はどの部分を計るのですか?

 「甲羅長」は「甲長」,「直線甲長」(SCL)が正式名です。その名の通り,項甲板から臀甲板までの甲羅中央を縦に走る直線を指します(*6)。決して甲羅の丸みに沿って計ったり,腹甲の喉甲板から肛甲板までの長さを計ってはいけません。ノギスを使い,首を引っ込めさせて計るのがよいのですが,太りすぎで頭を引っ込められないようなときは大変かもしれません。
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【6】水槽はどのくらいの大きさのを用意したらよいでしょうか? 材質は?

 「新版 カメの飼育ガイドブック」(*6)には,
   水槽の底面積:淡水棲ガメの甲長 = 982平方cm:10cm
といった式が掲載されています。これを元に代表的な水槽で計算してみますと
   水槽の底面   甲長(1匹の場合)(2匹の場合)(3匹の場合)
   30cm×20cm:   6.1cm
   35cm×20cm:   7.1cm   3.6cm
   45cm×30cm:  13.7cm   6.9cm   4.6cm
   60cm×30cm:  18.3cm   9.2cm   6.1cm
   60cm×45cm:  27.5cm  13.7cm   9.2cm
   60cm×60cm:  36.7cm  18.3cm  12.2cm
   90cm×45cm:  41.2cm  20.6cm  13.7cm
   90cm×60cm:  55.0cm  27.5cm  18.3cm
といったことになり,ミシシッピーアカミミガメの最大サイズである甲長約30cmまで育った場合を考えると,60cm×45cmの水槽で1匹が適当ということになります。「新版 カメの飼育ガイドブック」によると「ミシシッピーアカミミガメの成体をペアで飼育する水槽の場合(中略)少なくとも2m(横)×500mm(奥行)の大きさをもって合格とします。」となっており,さらに余裕をみているようです。ちなみに,「一辺の長さが甲羅の長さの5倍以上」と書かれている本(*7)もあります。なお,成長の度合いによって水槽を買い替える手はあります。また,「お座敷ガメ」として屋内(室内)で飼う形態もありえないことではありません(クサガメ(*8),イシガメ(*9))。あるいは,水槽を使わず屋外の池で飼育することが可能なら,それはそれで天然の日光浴や繁殖等の点で有利でしょう。ただし外部からの侵入者~子供のいたずらやイヌやネコ,鳥等の天敵(!)に注意が必要になります。(金網等で蓋をする等の対策)
 水槽の材質としては,プラスチック(プラケース),ガラス,アクリル等があります。また,水槽の代わりに衣装ケースを使う場合もありますが,これはプラスチック水槽に準じます。

【プラスチック水槽】
利点:
・軽い。容器ごと持ち運んでの掃除が楽。
・安価。餌のメダカの飼育等に気軽に使える。不要になった時に他の用途(物入れ等)に流用しやすい。

欠点:
・高温で溶け易いので,ヒーターやスポットライト等,熱を発する器具を使い難い。
・強度的な問題からか,容量の大きなものを見掛けない。亀のひっかきで傷がつきやすい。

【ガラス水槽】
利点:
・熱に強く,ヒーター,スポットライト等問題なく使える。
・頑丈で亀のひっかき傷はつきにくい。
・相当大きな容量の水槽も一般に市販されている。
・大きさはほぼ規格化されており,水槽のサイズに合った蛍光燈(フルスペクトルライト等)やフィルターが各種市販されている。

欠点:
・重い。必然的に水替え等の掃除が面倒になる。
・局所的な極端な温度差を生じたときや,亀が成長して器材を勝手に移動したりしたとき等,割れる危険性がある。
・値段はプラスチック水槽よりは高め。

【アクリル水槽】
利点:
・頑丈。割れにくい。
欠点:
・亀のひっかきで傷がつきやすい。
・値段は高め。

 ヒーターを使わない夏場でも,甲羅干し用としてスポットライトは使いますから,熱源の問題が一番,ということで「ガラス水槽」がオススメです。熱帯魚飼育用にかなり豊富な種類が出回っていて,もちろん亀用に転用できます。ただし,上部フィルターや蛍光燈がセットになっているものについては,水位不足で使用できなかったり,フルスペクトルライト(紫外線の出る蛍光燈)に変更したりと初期投資が無駄になるケースもありますので注意が必要です。
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【7】水はどの位の深さまで入れたらよいでしょうか?

 諸説あります。いずれも亀が容易に上がることが出来る緩い傾斜の陸地(甲羅干し用。浮島含む)があることが前提です。
(a) 甲羅の高さの2~3倍(四つん這い状態で,首を伸ばして鼻先を水面に出して息継ぎ出来る深さ)
(b) 完全に潜れて自由に泳ぎ回れるくらいの深さ

 (a)の立場を取っているのが,「カメの医・食・住」(*2),「ミドリガメの飼い方」(*3),「爬虫類クラブ」(*10),クレーンゲームのカプセル付属の説明書「カメの飼い方」(*11)で,購入直後など健康状態がすぐれず体力が低下している場合の溺れる危険性を重視しています。一方,中途半端に浅いと,ひっくり返ってしまった時に起きあがれない可能性も指摘されています(*3)。
 (b)の立場を取っているのが,「新版 カメの飼育ガイドブック」(*6),「テトラ カメの飼い方」(*12)で,前者は15~20cmの水位を,後者は水槽の高さの50~60%(通常の高さ30cmの水槽の場合は15~18cmに相当)を勧めています。運動のスペースと水質安定(水量が多ければ相対的に水が汚れ難くなる)を重視しています。
 結局のところ,亀の状態を判断して決めるのがよいでしょう。私のところの1匹は入手後しばらくは浮くのが苦手で水底を歩くようにしていましたので,安全のため水位を浅くしました。今ではだいぶ泳ぎが上手になりました(^^)。
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【8】エサをなかなか食べてくれません。

 拒食なり食欲不振なりといった状況には,次のような可能性が考えられます。
(a) 病気による衰弱,口内炎(口内感染症),栄養障害,視力障害,等。(体重や動作・挙動,鼻水の有無,舌の色,甲羅の強度等をチェック。)
(b) 環境変化によるストレス(購入直後等)。
(c) 複数飼育(飼育場の過密)によるストレス。弱い個体を強い個体が攻撃ないしはエサを横取りしてしまい,弱い個体がストレスで拒食してしまうといった現象。隔離・単独飼育にて解決。
(d) 温度が低い。水温が低かったり,スポットライト等による陸場の局所加熱等がなかったりしたときに,新陳代謝が低下。(水温は24~29度C,陸場は28~32度Cが適温(*3)。)
(e) 冬眠及び冬眠準備時。冬眠時は胃腸の中に食物が入っていると異常発酵し危険。
(f) エサのバリエーションが少なく飽きてしまった。
(g) 成熟したメスで卵を抱えている。(エサの摂取量が減る割には体重は増加。)
 思い当たる部分があれば,そこの部分を改善すればよいのですが,(b)(f)の場合,生餌(メダカ,赤虫,ミミズ,エビ)や乾燥餌でも同様に生臭いモノ等,いろいろ工夫してみるとよいでしょう。
 拒食時の対処法の資料としては,「新版 カメの飼育ガイドブック」(*6)が最も詳しいようで,他の病気の症例・対処法も詳しいようです。栄養性疾患や他の病気と対処法については「世界のカメ III 分類と病気」(*16)も相当詳しく(写真も豊富),参考になることでしょう。
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【9】どんなエサがよいでしょうか?

 人間のエサ(食物)の場合でも,自然食品志向派や生魚(刺身)が好きな人,菜食主義派(ベジタリアン),あるいはジャンクフードを主食にしてもこだわらない人,等,様々居るように,亀のエサに対しても色々な主義・主張があります。
 「新版 カメの飼育ガイドブック」(*6)は,どちらかといえば自然食品志向で,配合飼料については,たまに与える程度なら問題ない(成分表示を鵜呑みにするな,単食化は危険,配合飼料だけ与えていたために発生した栄養障害・腎臓疾患の事例もある)という立場で,様々の餌(植物の葉,果物,生魚,生肉,ミミズ,カタツムリ,マウス,他)を紹介しています。どのエサではどの成分が不足しているといった説明も詳しく,その場合のビタミンやミネラル等の栄養添加剤の併用も勧めています。
 他の本では,配合飼料を中心にして,いろいろなエサを与えることを勧めているものが殆どです。配合飼料といっても,もちろん亀用のが好ましく,犬用・猫用・鳥用の配合飼料は補助的には使えるものの,特定の成分が不足・あるいは過剰で好ましくないと説明されています。
 栄養成分でとくに気をつける必要があるのは,
【カルシウムとリン比率】
 骨格・甲羅の健全な発育のため。比率は1.5~2:1と言われており(リクガメでは4~6:1),哺乳類の1.2:1に比べ,カルシウムをより多く必要とする。ビタミンD3不足状態での過剰摂取も危険(高カルシトニン血症)。

【ビタミンD3】
 甲羅・骨格のために不可欠。ただし,太陽光(直射日光)やフルスペクトルライト等で紫外線(UVB,中波長紫外線,290~320nm)を受光できる場合には,皮下組織にて生体が必要なだけ生成できるため,食物から摂取しなくてもよい。また,脂溶性ビタミンのため,食物から摂取の場合は過剰症に気を付ける必要もある(高カルシウム血症,軟部組織の石灰化)。

【ビタミンA】
 目の腫れ,腎臓障害による四肢のむくみ,等。栄養障害で最も起こりやすい。脂溶性である点はビタミンD3,Eに同じ。

【ビタミンC,E,B複合体,ヨード(ヨウ素)】
 各種欠乏症。ビタミンB1(物質名:チアミン,又は,サイアミン)欠乏は淡水魚に含まれるビタミンB1破壊酵素(チアミナーゼ,サイアミナーゼ,アノイリナーゼ)の影響で起き易いとの説明がある。(「四訂食品成分表」(*18)では,生の貝類,甲殻類,コイにビタミンB1破壊酵素が含まれる,との記述有り。)

【脂肪】
 摂取過多で,脂肪織炎,肝臓の脂肪湿潤等を起こす可能性あり。

【蛋白質】
 摂取過多で,尿酸蓄積による通風発症の可能性あり。

といったようなものです(資料:(*4)(*6)(*16)(*17)(*18)(*19))。亀用の配合飼料の成分を見る限り,量は不明ながら,上記のミネラル,ビタミン類は大体含まれているようです。なお,ビタミンは,人間にとってはビタミンであっても,他の種の生物では自分で生成できる場合(すなわち,ビタミンではない場合)があるので,実は結構ややこしいのですが,亀については,そういう事例は今のところ書籍では見つけていません。ミシシッピーアカミミガメの食性としては,幼体のうちは肉食傾向が強いのですが,成体では草食傾向の強い雑食性となりますので,成長に合わせて食事内容を変えることも必要になってくるでしょう。
 以下,いくつかのエサについて書いてみます。(注 当時発売の亀用配合飼料,ビタミン剤・サプリメントについていろいろ記載してましたが,省略します。)

(a) 乾燥飼料
【桜えび(素干えび)】
 人間用(料理用)。スーパー等で普通に入手できる。「四訂食品成分表」(*18)での一般値は100g中カルシウムは2g,リンは1.2gと,カルシウムの含有量は多い。ビタミンB1,B2は豊富だが,A,Cは零なので注意が必要。脂質(脂肪)は7gと少な目で問題ない。

【煮干し】
 人間用(料理用)。100g中カルシウムは2.2g,リンは1.5g。ビタミンはB1,B2は含有されているが,ビタミンA,Cは含まれていない。脂質は2.9gと少なく問題ない(*18)。ペット用のが安価で塩分が少ないようである。

【しらす干し】
 人間用(料理用)。100g中カルシウムは0.53g,リンは0.59gと,リンの比率が高い。ビタミンはB2は含有されているが,B1は零に近く,A,Cは含まれていない。脂質は1.6gと少なく問題ない(*18)。

(b) 自然食品・生餌
【野菜,果物】
 幼体(子ガメ)は肉食傾向が強いため,あまり食べないが成長にしたがって草食傾向が強まりよく食べるようになる。

【淡水魚(メダカ,タナゴ,クチボソ,ドジョウ),金魚(小赤,エサ金)】
 生餌として丸ごと与える。亀の気晴らしや自分で追うことによる運動不足の解消,生きている状態ではあまり水を汚さず,亀が食い散らかしたエサを片づけてくれる効用もある。内蔵(肝臓)はビタミン類が全般に豊富。コイやフナの仲間は一般にビタミンB1が豊富に含まれている(*18)。ただし,同時にビタミンB1破壊酵素も含まれているため,これだけを与えている場合には欠乏症が起きる心配がある,とのこと。丸呑みできる大きさの方が水を汚しにくい。

【ミミズ,イトミミズ】
 生餌として与える。栄養面はすぐれているが完璧ではないらしい。釣具店から購入の際は,毒のあるもの(キヂ,シマミミズ)は避けること(*7),消毒されている可能性もある点(*20)に注意。

【ミルワーム。ブドウムシ】
 生餌として与える。ミールワームとも呼ぶ。甲虫の幼虫。カルシウムが不足(*5)。ブドウムシは釣具店で入手可。

【ヌマエビ,ザリガニ,モエビ】
 生餌として与える。亀が傷つけられることがあるのでハサミは取る。カルシウムは豊富。ビタミンB1破壊酵素含有については淡水魚と同様(*18)。

【コオロギ,イナゴ】
 生餌として与える。顎で亀が噛まれることがあるので弱らせてから与えた方がよいとも。また,カルシウム剤やビタミン剤をふりかけてから与えた方がよいと書いているものもある。コオロギは爬虫類用ペットショップでたいてい扱っている。野生のものを採取時は農薬に注意(*20)。

【カタツムリ】
 生餌として与える。自然下で殻ごとよく食べている餌ではあり,カルシウムは豊富だが,栄養バランスはやはり問題があるらしい。

【シジミ】
 つぶすか開いて与える。ビタミンB1破壊酵素含有については淡水魚と同様(*18)。

【鶏頭】
 骨ごとつぶして与える。鳥肉専門店で「クビ」として入手できることがある。

【スナギモ,レバー,ハツ,鳥肉,豚肉】
 脂肪の少ない部分を選び生で与える。ただし,生肉類はサルモネラ菌やサナダムシ等の寄生虫を心配するものもある。カルシウムはかなり不足。
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【10】エサを与える頻度はどれ位がよいでしょうか?

 資料によって多少の違いはありますが,幼体(子ガメ)と成体とで異なる点ではほぼ共通しています。大人になってからは餌の与えすぎによる肥満が問題になってきます。

(a) 幼体の場合
・毎日,食べられるだけ(目安は亀の頭の大きさぐらい)(*3)
・毎日,あるいは週に2~3回。量は毎日の場合はレプトミン1個,週2回の場合はレプトミン2個(*11)
・1日おきよりは少し回数を増やし,代わりに量は減らして。ビタミン剤は1か月に1度(*5)
・1日1回。ビタミン剤・カルシウム剤も毎回(*20)
・毎日(*10)

(b) 成体の場合
・1~2日おきに,少な目に(亀の頭の大きさよりは)(*3)
・1日おきに,まとまった量を。量の判定は四肢の周囲をよく観察し,痩せてきたか太ってきたかで調整。ビタミン剤は1か月に1度(*5)
・1日おき。ビタミン剤・カルシウム剤は1回おきに(*20)
・週2~3回以上(*10)
・ほとんどの場合,週に3回が適当。毎日の給餌は不要(*6)

 結局のところ,環境の温度や亀の運動量によっても違ってくることでしょう。そして運動量は,水槽の大きさや水位(存分に泳げる),刺激の有無(メダカ等の生餌を追い回す。メダカの逃げ足も速いので,毎回確実に捕まえる訳ではなく,結構共存してしまう),といった要素にも影響を受けることでしょう。人間の場合でも20代男性で,一日の栄養所要量2500kcal(普通の労作)に対し,軽い労作では-300kcal,重い労作では+1000kcalとかなり幅がありますから,亀の場合も同じことがいえるのではないでしょうか?(活発な亀とそうでない亀)
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【11】水温はどの程度がよいでしょうか?

 水温だけでなく,陸場の温度にも注意する必要があります。というのは,ミシシッピーアカミミガメのようなスライダーは甲羅干し(日光浴)が大好きで,自然下では1日の大半を太陽に当たって過ごすことが多いからです(*14)。
 またその生息域は広く,「ミシシッピアカミミガメは,ミシシッピ川流域やオハイオ川下流域から西はテキサス州中央部やメキシコ北東部にかけてのほとんどの地域に生息」しており,また,「水温が10度C以下になる日が数日続くと,北部産スライダー類は活動しなくなり,あるいは少なくとも餌を摂らなくなる」ものの,「生息地域の最も北部以外では,冬眠もしないし,南部のほとんどの地域では真冬でも泳いだり日光浴しているのが見られる」(*14)といった生態を知ると,ますます温度設定をどうしたらよいか迷ったりするのですが(^^),やはり飼育に適している温度というのはあるもので,この点については,「ミドリガメの飼い方」(*3)が一番わかりやすいようです。
   水温:24~29度C
   陸場:28~32度C
「日本の夏では,この範囲より高くなっても,ほとんどのカメが耐えられます(ただし,真夏炎天下での水温上昇にはくれぐれも注意してください。)」とも記載あります。
 他の資料では,水温の適温は
   24度C(*5)
   23~27度C(*12)
   24~26度C(*2)
   25~30度C(*21)
   23~29度C(*6)
となっていますが,大同小異でしょう。
 危険な温度としては陸場のスポットライトなしでの18~22度Cを,「暖かすぎて冬眠できないが,涼しすぎて食欲も出ないで,免疫力も低下してしまう」と記述しています(*3)。亀用の水中ヒーターの中には23度C設定のものがあり,この点は注意した方がよいでしょう。しかし,私自身の経験でいえば,この温度(23度C)でも亀に食欲はありましたし(それ以前のヒーターなしでは食欲がなかった),スポットライトを追加してからはさらに餌食いがよくなりました。が,わざわざ危険な橋を渡る必要がないのは確かです。他,高い方では,32度C以上が続くと危険,と記載しているものもあります(*6)。
 動物病院の先生に,急性肺炎でお世話になったときには,25~30度Cに保つようにご指示いただきました。病気の疑いがあるときは普段より2~3度高めに設定する(*16)のがよいようです。また,幼体は成体に比べ温度はやや高め(28~30度C)にした方がよい,と書いているものもあります(*2)。
 陸場の温度については,陸場が充分広ければ,スポットライト直下の温度が多少高くても,亀が自分で位置を調整して適当な温度のところに落ち着いて甲羅干しを始めますので,極端に熱くない限りはそれほど神経質にならなくてもよいでしょう。
 温度計も別途きちんと用意した方がよいでしょう。外気の状態や水槽の攪拌状態にも依存しますので,ヒーターやサーモスタットの調整目盛りを盲信せず,温度計を別に用意して計った方が安全です。
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【12】ヒーターにはどんな種類があるのでしょうか?

 幼体や体調の良くない個体は加温して冬眠させずに冬を越すのが安全なのですが,真夏並みに部屋全体の暖房を入れている人はそう多くないでしょうから,飼育スペースの局所保温用にヒーターが必要となる訳ですね。水槽で使える,熱を発する器材としては,次のようなものがあります。

【水中ヒーター】
 細長い円筒状で,水に沈めて使います。大部分の製品はガラスやセラミック等の表面材質により白い色をしています。一般に「ヒーター」あるいは「熱帯魚用ヒーター」というとこれを指します。
 通常は,加熱するだけの機能しかありませんので,温度センサーによる電源の入切を行う「サーモスタット」に接続して使います。また,温度センサー部をヒーター部に内蔵した「オートヒーター」という製品もあります。オートヒーターの中には,さらに温度固定となっているものもあり,温度可変のものより安価になっています。
 水中ヒーターの利点としては
・熱帯魚用をそのまま流用でき,種類も豊富で比較的安価。
・センサーは電子式が多く,温度制御はかなり正確。
といったことが言えますが,もちろん注意点もあります。
(1) 水位が浅い状態で使用すると,水の蒸発や亀のいたずら等で水上に出てしまい,過熱の危険性がある。
(2) 亀が触れると火傷の危険がある。
(3) 亀が大きくなると割られることがある。
(4) 大きくなった亀にケーブル部分をかじられて漏電する危険も考えられない訳ではない。
(5) サーモスタットのセンサー部がヤワなものだと,亀にいたずらされて水の外に出て,結果として水が沸騰して大変な事故につながることがある。
(6) 寿命が比較的短い。頻繁にON/OFFを繰り返すため,劣化しやすく,一年あるいは一シーズンで交換と説明書に明記してあるものもある。
このうち,(2),(3)を予防するには,「ヒーターカバー」なる製品を利用するのがよいでしょう。さらに,たいていはキスゴムが付属しているので,水槽にさらにがっちりと固定でき,(1)の亀のいたずら防止にも効果があります。また,水槽の壁面から距離を置くことが出来るので,ヒーターの局所加熱による万一の水槽の破損防止の効果も期待出来ます。ただし,水がヒーター部によどみやすくなるため,オートヒーター等のセンサー部内蔵型ヒーターには使用できない旨の説明書きが付属していることがあります。(というものの,エアレーションやフィルター等で水流を作って回避することは可能ではあります。) なお,接合部が弱く,一旦ヒーターをセットしたらはずせない(あるいは,はずすと壊れやすい)と書いている製品は,掃除の際不便ですので(ヒーター表面にカルシウム分などが沈着・付着しやすいため),選択時には注意する必要があります。構造が簡単のため,空缶等で自作も可能でしょう。
(1)の水の蒸発による水位低下・ヒーター部露出の危険を避ける一つの方法として,水位センサーを使用する手があります。これは水位がセンサー部より低くなると電源を自動的にOFFにするもので,ヒーターと組み合わせて使用します。サーモスタットと一緒になった製品もあり,これだとセンサー部が一つになるので,すっきりします。もちろん亀のいたずら等によりセンサー部が外に出たり沈んだりする危険性は(1)同様ありえます。
(4)の漏電の危険性は,水槽内で使うすべての電気製品(フィルター等)に共通します。一般の電気店で漏電遮断器が販売されていますので,それを追加使用するのが安全かもしれません。(大元のブレーカーでなんとかなるかもしれませんが。) 亀と飼育者の安全のため,ブレーカー/漏電遮断器の設置を強く勧めている本もあります(*6)。最近の製品では,空気中に露出したときの過熱を検出して自動的に電源が切れる,より安全性の高い製品が登場してきています。ただし,一旦この機能が働いてしまうと二度と使えなくなるものもあるようですので,購入・使用時は注意した方がよいでしょう。プラグ間に埃がたまって漏電するのを防ぐトラッキング防止電源プラグ等を採用した製品や,最初からサーモスタットとヒーターを同梱したセット商品,ヒーターカバーが最初からつけてあって亀用と銘打っているもの,等,バラエティに富んでいますので,目的に応じて選ぶとよいでしょう。(ただし,亀用との表示を過信するのは禁物で,調整できる温度範囲等には気をつけるようにしましょう。)

【パネルヒーター】
 底面ヒーター,プレートヒーター,遠赤外線ヒーター,フィルムヒーター,とも呼びます。ケーブルヒーター,ヒーティングテープもこれに含めて考えます。
 水槽の下に敷いて使用します。水中ヒーター同様サーモスタットと組み合わせるもの,温度センサーが内蔵されているもの,があります。また,防水の有無(完全防水で水に沈めても使えるもの,水滴程度なら大丈夫なもの,まったく駄目なもの)にも留意する必要はあるでしょう。リクガメ用で水槽内に置いて使う厚みのある型や岩の形をしたものもあります。
 パネルヒーターの利点は
・水位に影響されにくい(外部サーモスタット使用時はセンサー設置位置に気を付ける必要はある。)
・水槽の下に敷いた場合は,亀に位置をずらされたり電源ケーブルをかじられる心配がない。
といったものですが,外部センサー使用時には,
・サーモスタットのセンサー部がヤワなものだと,亀にいたずらされて水の外に出て,結果として水が沸騰して大変な事故につながることがある。
といった水中ヒーターと共通の問題は残ります。また,温度センサー内蔵のオート型の場合でも水中ヒーターほどは微妙な温度調整が可能な製品はみかけないようです。温度管理がラフなものについては外部サーモスタットと組み合わせる等した方が安全かもしれません。ともあれ,水中ヒーターより安全性は高いため,こちらを勧めている本もあります(*6)。価格はやや高めです。また,ペット用品店以外にも園芸店等でも入手できる場合があるとのことです(*22)。

【ひよこ電球,赤外線灯,セラミックヒーター,レフ球】
 水を直接暖めるものではありませんが,水量が少ないときなど,これだけで充分としている本もあります(*22)。また,陸場の加温(空気を暖める)にも役立ちます。
 ひよこ電球(ひよこ保温球)は,白熱球の中にニクロム線を入れたようになっていて,説明書きによると,放熱量は一般の電球の約2倍。円筒状の金属の覆いのついているものもあります。
 セラミックヒーターもやはり電球のソケットにさして使うものが発売されています。レフ球(リフレクト球,電球後方に反射板があり,光を前方に集中させる)は本来ホットスポット用(甲羅干し,日光浴用)ですが,これだけで結構暖まる場合もあります。が,昼夜のメリハリをつけるために夜間は光が出ないか光の弱い他のものを使う方がよいでしょう。
 いずれにせよ,温度計で水温,陸場の温度をちゃんと計って使用するのがよいでしょう。
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【13】ヒーターの細かい温度調整機能って必要ですか?

 必要です。オートヒーターの中でとくに温度固定のものは,水の容量によって全体の温度平均が変わりますし,外気によっても温度平均が変わってきてしまいます(マニュアルに明記されています)。温度センサー部がヒーターに内蔵されていると,その部分だけが局所的に目的の温度になったとしても,水の攪拌が充分でなかったり,暖めるさきからどんどん周辺で冷えてきてしまうような場合はどうしても誤差が大きくなってしまうためと考えられます。温度センサー部が別の場合は,ヒーターから離して設置することで,そういった誤差を防げますし,温度を調整できる場合は,手動で微調整(たいていは目的温度より2~3度高めに設定)することで回避できます。
 亀が病気の場合(とくに風邪や肺炎等の呼吸器系の場合)も,温度を2~3度高めに設定する必要があります。温度固定のヒーターの場合,そういった融通がききません。私は,これで非常に後悔しました。
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【14】甲羅干しって必要ですか?

 必要です。ミシシッピーアカミミガメは自然環境下でも甲羅干し(日光浴)が大好きです。甲羅干しには以下の効用があります。((*6),(*8)他,殆どすべての本で,甲羅干しの重要性を(ときには過剰なほど)訴えています。)
(1) 骨格や甲羅の健全な発育に必要なビタミンD3を生成します。220~320nm の紫外線(UVB)が必要です。
(2) 体温を上昇させ,食べた物の消化促進をはかったり,代謝を活発化させます。
(3) 甲羅や皮膚を乾燥し,皮膚病や寄生虫感染を予防します。
 屋外で直射日光の出来る環境なら問題ないのですが(その場合でも日射病にかからないよう,日陰の逃げ場をつくってやったり,乾燥できる陸場を設けるのは必要),屋内で飼育する場合は,次のような器材を必要とします。

【フルスペクトルライト】(注:最近は,爬虫類用ライトと呼ぶことが多い)
 太陽光のスペクトル構成に近く,紫外線の出るライト。(1)の目的で使用します。(3)の殺菌効果もあります。たいていは蛍光燈型。また,紫外線は290nm~320nmを保証しているものが多い。紫外線量は押さえ気味(太陽光と同程度の強度割合)のため長時間(一日10~12時間)の照射でも問題ないとのこと。(殺菌灯に使われる真の紫外線灯の場合,強すぎて人間でさえ目がつぶれることがあり,照射時間の調整が難しいといえます。)

【スポットライト】
 レフ球等,光と熱を局所に集中する型の電球。(2)(3)に効果があります。甲羅干しの行動を促す要因としては,低い色温度(橙から黄色)が有効と言われています(*6)。照射直下の地面温度は書籍によって違いますが大体28度Cから40度Cがよいようです。なるべく亀が自分で快適な温度を選べるように(暑いときには少し離れた位置で甲羅干しを出来るよう)設置環境を工夫します。水槽全体に照射するのではなく,あくまで局所照射(ホットスポット)用です。殆どの電球(白熱球)で,ビタミンD3合成に必要な波長の紫外線(UVB)は出ませんので(1)の目的には使用できません。

【陸場】
 甲羅干しで完全に体を乾かせるように陸場(小島,浮き島,その他)を用意します。(3)の目的で使用します。スポットライトの熱で溶けないようなものを選ぶのがポイントです。

 (1)のビタミンD3合成と利用については,以下の経路(合成過程)のようになっています(*4)。

   皮膚
      プロビタミンD3(7-デヒドロコレステロール)(脂質)
        ↓UVB(中波長紫外線)
      ビタミンD3
   肝臓   ↓
      25-OH-D3
   腎臓   ↓
      1α-25-(OH)2-D3(活性型ビタミンD3)
   腸管   ↓
      (カルシウムの吸収を促進)

※ 「プロビタミン」は体内に取り入れられた後にビタミンに変化する物質の総称。カロチン(プロビタミンA),椎茸や酵母菌(イースト)等に含まれるエルゴステリン(プロビタミンD2)等が有名(*19)。

 皮膚で出来たビタミンD3が肝臓,腎臓を経て活性化される訳で,その意味では,紫外線照射によらず食事による代替摂取も可能です。ただし,脂溶性ビタミンのため過剰症の危険があり,添加量に注意する等,太陽光やフルスペクトルライトの方が安全とはいえます。(生体による生成の場合過剰生成に対する抑制機能が働く,とのことです。)
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【15】甲羅干し用の小島はどんなのがよいでしょうか?

 まず,甲羅干しの目的を再確認しましょう。
  (1) 220~320nm の紫外線(UVB)の照射(ビタミンD3の合成)
  (2) 体温を上昇させる(消化促進,代謝の活発化)
  (3) 甲羅や皮膚を乾燥(皮膚病や寄生虫感染の予防)
(1)で紫外線が当たると,色が退色したり,プラスチック類はもろくなったりしますが,まぁ,あまり気にすることはないでしょう。むしろ(2)(3)で熱を受けることが問題です。大体30~40度Cに調整するように,とありますが,光を集中させる型のスポットライトの場合,光軸の中心温度は相当熱くなることが考えられ,溶けるような材質は避けた方が無難です。

 甲羅干し用の小島を選択・購入時の検討項目としては,以上も含め,次のようなものが考えられます。
(a) 完全に体を乾かせるよう,陸場が水面より完全に上になること。水位を高く保持するような場合は,ブロック等を敷き,高さを上乗せする方法もある。
(b) 亀が容易に上がることが出来るか。入手直後の幼体の場合,泳ぎがヘタでなかなか浮島型のものに上がれない場合がありうる。また,すべって登れないような材質や垂直に切り立って登り難いようなものもうまくない。また,水の自然蒸発で水位が下がったときに登り難くなるようなものもうまくない。
(c) はさまって身動きが取れなくなったり溺れたりしないような形状かどうか。亀の成長の具合も考慮する。(今は大丈夫でもそのうち大きくなって挟まることがあるかもしれない。)
(d) スポットライトの熱に耐えられるか。
(e) スポットライト照射時,受光面積に余裕があるか。陸場の面積がライトの受光面積に比べ小さすぎると,亀が自分で適当な温度の場所を選べず,結果として利用されないこともありえる。
(f) 浮島型や空洞型の場合,上部の甲羅干しの目的以外に下部の空間も有効に活用でき,生活空間を実質広く取れる利点がある。
(g) 空洞型の場合,シェルター(隠れ場所)としても機能できる。入手直後等,亀が人に慣れていない場合は,亀を落ち着かせる効果がある。ただし,はさまって溺れないような構造かどうかに注意。空間が広すぎると,隠れ家として認識されない場合もある。
(h) メンテナンス(掃除)が楽か。複雑な形状や多数の部品を組み合わせるようなものだと,それだけ掃除(洗浄)が面倒になる。
(i) 繁殖を考えているような場合は,小島・浮島のようなものではなくちゃんとした砂場が必要。なおかつ水場と分離する。掘った途端に水が染み出てくるようなものはうまくない。水に産み落とされた卵はそのままでは窒息死してしまう危険性が高い。
(j) 重過ぎて水槽に負担をかけないかどうか。亀が大きくなったときには,移動させられて水槽が割られる危険性もある。(ガラス水槽がとくに危険。)

といったようなことを考えると,自ずと答えが出てくることでしょう。(i)の繁殖は幼体や独身ガメ,また繁殖の季節でなければ,考えなくてもよいでしょう。

 甲羅干し用の小島として各種市販製品があります。浮き島型の製品~陶器製のもの(中が空洞で空気を詰め浮力を得る)等,出ているようです。また,厳密には亀用という訳ではありませんが,陶器製の水槽アクセサリー群(コクルバーグ,ロックシェルター)も甲羅干しの島として利用できます。また,何も爬虫類用の市販製品に頼らなくても,いろいろなものが使えます。

【流木(熱帯魚用各種)】
 水に沈むもの。アク抜きや消毒がポイント。(アク抜き時は1~2週間ほど水につける。熱湯で煮るとタール分が溶解し防腐効果が無くなるので注意。アク抜きされた市販品もある,とのこと(*21)。)

【岩,石,瓦,レンガ】
 適当な大きさのものを。あるいは重ねて。

【砂利,砂,土】
 適当な仕切り~登り易いもの~を使って水場と陸場を分けたり,石を水際に置いたりすると設置が楽。

【植木鉢】
 半分に割って使う。プラスチック製で水に浮いてしまうのは使いにくく,また,表面がざらざらしていて亀が登り易い素焼きのがよい。

【ブロック】
 コンクリート製以外に,熱帯魚用の軽い陶器製のもある。ただし亀が大きくなると,軽いのは簡単に動かされてしまうし,重過ぎると水槽に負担がかかるので,一長一短。材質・状態によっては,腹甲が擦れて傷がつくことがあるので注意。(ある時期これで私は失敗し,コンクリートの枡を結局撤去しました。)

【板(スノコ)】(*22)
 浮島として使う。亀の重さで沈まないように。また,位置が移動してしまってホットスポットの効果がなくなってしまわないよう,ヒモ等で固定する。

この他にも様々工夫できることでしょう。
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【16】スポットライトはどんな点に気をつけたらよいでしょうか?

 スポットライトは,甲羅干しの3つの目的
  (1) 220~320nm の紫外線(UVB)の照射(ビタミンD3の合成)
  (2) 体温を上昇させる(消化促進,代謝の活発化)
  (3) 甲羅や皮膚を乾燥(皮膚病や寄生虫感染の予防)
のうち,(2)(3)を対象とするもので,通常,レフ球(リフレクト・ランプ,反射型ランプ)を使用します。とくに,甲羅干しの行動を促す要因として,低い色温度(橙から黄色)が有効と言われています(*6)。

 レフ球の構造は,電球内部の後方半分がアルミニウムの反射板になっていて光と熱を前方に効率よく照射できるようになっています。爬虫類用として,いくつかの製品が販売されていますが,いずれも電球のみの販売で,別途ソケット等が必要です。輸入物の場合,日本向け100V仕様と,直輸入版の125V仕様の2つが流通しており,125V用を日本で使用すると当然20パーセントの出力ダウンとなるので注意が必要でしょう。
 実際,どのくらいの距離で照射面積(円)がどれくらいで,温度がどの程度上がるかについては,バスキング・ライトの説明書に記述があり参考になります。まず,照射面積,というか照射円の直径ですが,30Wタイプで15.24cm(6インチ)で照射円の直径も15.24cm,50Wタイプは25.4cm(10インチ)で照射円の直径も25.4cmになります。この距離にて,室温 華氏68~70度(摂氏20~21.1度)の場合,華氏80度(摂氏 26.7度)になる,とのことです。

 爬虫類用ではありませんが,一般のレフ球,ミニレフ球を使用することも出来ます(*23)。

【レフ球】
・一般の電球(白熱球)と同じ口金(直径26mm)。電球のサイズもほぼ同等から大き目のものまである。
・集光形(ナローレフ。ビーム角度30度)と散光形(ビーム角度60度)の2種類がある。当然ながら前者の方が光・熱をより局部的に集中できる。
・ワット数は大き目。

【ミニレフ球】
・レフ球より小さい口金(直径17mm)。電球のサイズも小さい。
・集光形や散光形といった別は無い。ビーム角の記載がないものが多いが,40度と書いてあるものもある。
・ワット数は小さ目。

 電球以外に,ソケットが必要になります。クリップ式で水槽の縁に取付ける形が便利ですが,それだけでは距離が調整できませんので,出来れば陸場から距離を調整できるような機能をもったソケット(スタンド)が欲しいところです。室温が変われば当然ホットスポット下の温度も変わってくるからです。また,何かの間違い(振動等)で,誤ってランプが陸場に激突したり水に落ちたりしないようにしなければなりませんので,安全性と可変性を兼ね揃えたものとなるとなかなか見つけるのが難しいかもしれません。ランプのワット数を替えるとか,陸場を高くして(水位も高くして)距離を近づける等の配置の工夫が必要になるかもしれません。あるいは,照明用にランプの光度を連続的に変えるための製品も一般電気店で扱っていることが多いので,それを間に入れて使う方が楽かもしれません。
 スポットライトは水槽全体に照射するのではなく,甲羅干しできる陸場の一部に局所的に照射・加温し,亀が自分で適温を選べるようにしてやります。充分暖まったりあるいは熱くなってくると,体の向きを変えたり,他の場所に移動したり水場に飛び込んだりします。
 設置時の照射直下の温度については諸説ありますが,大体28度Cから40度Cぐらいのようです。
   ※ 陸場(スポットライト下)の推奨温度(諸説)
     ・30度C(*1)
     ・30~33度C(*2)
     ・28~32度C(*3)
     ・40度C(*20)
 殆どの電球(白熱球)で,ビタミンD3合成に必要な波長の紫外線(UVB,220~320nm)は出ませんので,その目的には,別のライト(フルスペクトルライト)を使用することになります。
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【17】陸地と池の割合はどの程度がよいでしょうか?

 まず押さえておきたいのは,ミドリガメ,すなわち,ミシシッピーアカミミガメは本来大変泳ぎの上手な亀(ヌマガメ)ということです。幼体のときは泳ぎがヘタでなかなか浮かべない個体もいますが,次第に泳ぎが上達してきます。
 ヌマガメの飼育環境の説明としていくつかのタイプに分類して(まとめて)説明されていることが多いのですが,その中でのミシシッピーアカミミガメの扱いは
  ・「カメの医・食・住」(*2)
     ヌマガメ科3:ヌマガメ飼育の基本となる種類で泳ぎが上手。
  ・「世界のカメ II 飼育・繁殖のすべて」(*21)
     ヌマガメ科D:よく泳ぎ,水量の豊富な方が良い種。
といったような具合です。よって,陸場より,水場の方を多く取ることを勧めていることが多いです。
  水場:陸場 =
   1:1 ~ 7:3(*2)
   2:1 ~ 3:1(*21)
   1:1 ~ 3:1(*6)
 繁殖(産卵)を目的にしないのであれば,浮島や空洞型の陸を設けることで,より空間を有効に活用できることでしょう。工夫の余地はいろいろありそうです。
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【18】底砂は必要ですか?

 砂利を濾材とする底面フィルターの場合は選択の余地がない訳ですが,一般には,次のような利点,欠点がありますので,迷うところです。

【底砂(砂利)の利点】
(1) 亀が砂利を食べる!(*3)(*6)
・自然環境下では,小石や泥や砂を時々食べていることが確認されている。
・カルシム補給(白骨をかじる亀もいる)と繊維質摂取(エサに繊維質成分追加で小石を食べなくなる例も),消化を助ける役目,ミネラル(微量元素)の摂取,等。
・小さくて表面が粗くないものを。
・サンゴ砂ならカルシウム供給の意味も。(ただし,水質はアルカリ性になる。)
(2) 生態環境が再現され,滑り止めになるので亀が落ち着く(*2)
(3)摩耗による爪の伸びすぎ防止(*2)

【底砂(砂利)の欠点】
(1)亀が食べた場合,とくに中途半端な大きさだと腸閉塞等の危険がある。(*4)(*20)(*22)
(2)水替えの手間が大変。砂利の出し入れ,洗浄の手間がかかる。(*3)(*20)
(3)土替えの手間が大変。珪砂等多孔質で匂いを吸収したり底面濾過時の生物濾過の為の微生物の繁殖に適しているようなものは,それだけ汚れ易く,砂利自体の交換頻度は高くなる。(*20)(*22)
(4)亀は排泄物が多いため,雑菌繁殖の温床になりやすい。(*20)

 砂利の種類には,次のようなものがあります。
   大磯,珪砂,サンゴ砂,人工砂(亀用等と銘打っているもの)
 砂利を使う利点は多そうですが,それにかかる人間側の手間をどう考えるかによるでしょう。水替え・掃除時に砂利で傷がついて手が荒れたり,面倒になって掃除頻度が少なくなり非衛生的になって亀が病気になったりしたら本末転倒でしょう。食用に容器の一部に設置することを勧めているものもあり(*3),そういった妥協案を行う手もあるかもしれません。
 私自身,最初は底面フィルターを使って砂利(人工砂,麦飯石)を使っていたのですが,手が荒れて痛むようになったのと,砂利の洗浄が次第に面倒になり,別の方式のフィルターに替えて砂利は止めてしまいました。砂利を敷いていた時分,確かにウチの亀たちはときおり砂利をパクリとやっていましたが,粒が大きかったせいかすぐ吐き出していました。今は砂利の代わりにボレイ粉(牡蠣の貝殻・小鳥用)を少し与えていますが,底砂というほどの量ではなく完全に食用を意識したものです。
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【19】水草は必要ですか?

 熱帯魚等飼育の際は酸素発生源としての意味を持つ水草ですが,冬眠時は水中で粘膜呼吸をする亀とはいえ,通常は肺呼吸ですので,酸素発生源としての水草の効用はさほど大きくないといえます。
 亀飼育における(本物の)水草の利点,欠点は次のようなものです(*6)。水草を使う場合は丈夫なもの,有毒でないものを選ぶ必要があります。

【水草の利点】
(1) 水質の維持・向上に役立つ。
(2) 亀のエサになる(ビタミン等の供給源)。
(3) 亀の隠れ家になる。(ミドリガメに緑色の水草は良い保護色になる?)

【水草の欠点】
(1) 亀のエサや玩具になったり,踏み潰されたりしてすぐ駄目になってしまう。
(2) 寄生虫(体外・体内)等,亀に害なす生物の棲家になりやすい。

 隠れ家としての水草の効用を主とするなら,プラスチック製等の人工水草を使う方法もあります。これにも次のような利点・欠点があります(*6)。人工水草を使う場合は,亀が間違って食べられないような(ちぎれないような)丈夫なものを選ぶ必要があるでしょう。

【人工水草の利点】
(1) 丈夫で,亀に踏み潰されても,そう簡単には駄目にならない。
(2) 腐れないので長持ちする。
(3) 洗いやすい。

【人工水草の欠点】
(1) 亀が間違って食べてしまうと,胃腸に固着してしまう。(ただし,これは稀なケースで殆どはうまく共存する,とのこと。)

 水草ではありませんが,グリーンウォーター(微小な藻類が繁茂して緑色になった水。屋外で水を入れた容器に直射日光を当てて作る。「アオコ(青粉)が発生した水」という表現もある)なら,亀の健康に良い,真菌発生予防(皮膚病予防)の効果がある,としているものもあります(*3)(*22)。一方,藻類はたいてい水槽の調子があまり良くないときに発生する(窒素分過多,硬度が高くアルカリ傾向・CO2濃度低い,底砂が細かく腐敗,照明不備)としている資料(*24)や,「平野部の小さな河川や富栄養湖にしばしば見られる。表層部は酸素が過飽和になるが,下層部は遺体の分解により溶存酸素が欠乏し,魚類が害を受けることがある。」(水の華,青粉)と記述しているもの(*19)もあり,グリーンウォーターについては正直いって,亀に良いのか悪いのか判断に迷うところです。
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【20】亀も溺れることがあるって本当ですか?

 亀の呼吸方法は
  (a) 肺呼吸
  (b) 皮膚呼吸
  (c) 咽頭部の内側の粘膜を使った呼吸
  (d) 総排出腔の粘液嚢を使った呼吸
に大別されます(*1)。冬眠時,水中に何ヶ月も居て問題ないのは,(b)~(d)の呼吸方法があるからだそうです。 が,しかし,冬眠中は代謝が不活発なので,肺を使わなくてもよいのですが,冬眠していないとき・活発に動き回っているときはそういう訳にもいきません。「新版 カメの飼育ガイドブック」(*6)には「水難事故」の項が設けてあるくらいです。また,他の本でも,水槽内のレイアウトの注意点として,息継ぎしやすいように陸場を設けることこと,の他に器材によって体を挟まれないように,と注意しているものが多いです((*2)(*6)(*10)(*22))。また,本来泳ぎが上手なはずのミシシッピーアカミミガメも,生まれて間もない幼体は,まだ泳ぎが上手でないため,溺れ易い,ということも留意した方がよいでしょう。
 ちなみに,溺れている亀を見つけたときの対処法は,
  (1) 頭を下にして肺から水を吐き出せ,
  (2) 背甲を上にした状態で前肢を伸ばしたり押し込んだりして人工呼吸を試み,
  (3) 息を吹き返した後も肺炎併発の可能性があるので,いつもより暖かく保ち,
  (4) 獣医さんに出来るだけ早く診てもらう(浸透性の利尿剤,呼吸刺激剤,抗生物質,等の投与)。その際,とくに冬場はタオル等で冷え込まないように保温した状態で移動する。
といったようなことになります。((*6)を元に,私自身の経験~獣医さんからのアドバイスを追加。)
 私自身,水難事故を経験し,その後の肺炎併発により命を助けることが出来ず,悔しい思いをしました。発見・肺炎併発からわずか1日,獣医さんによる注射の甲斐もむなしく,息を引き取りました。フィルターの吐出口と水槽壁面の間隔が充分でなかったことが原因でした。フィルターに限らず,流木やブロック等で陸場等を設ける際は,ぜひともこの種の事故に注意して配置するようにした方がよいでしょう。
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【21】フルスペクトルライトって何ですか?

 文字通り解釈すると,光のスペクトル(7色の可視光,紫外線,赤外線)の全て(広域スペクトル光)を出す光源,太陽光のスペクトル構成に近い光源,ということになるのですが,実際のところ,普通の蛍光灯のような可視光に加え,正常な骨格・甲羅形成のために必要なビタミンD3生成に必要な220~320nmの波長のうち290~320nm(UVB)の光を出すライトを指すようです。蛍光灯式が殆どで,そのため,赤外線については充分ではないようです。(レフ球等の赤外線を多く出すライトをホットスポットとして併用するのは,その意味もあります。)
 また,殺菌や皮膚病の治療等に使用される「紫外線灯」と区別する意味で「フルスペクトルライト」の語が使われることもあるようです。紫外線灯はよく人間の皮膚科の病院でもお目にかかりますが,直視すると目に悪いので,紫外線をカットするサングラスを併用する訳ですが,同じ注意点は,やはり亀にもあてはまります。亀にサングラスをさせる訳にはいきませんので,照射時間を短くする訳ですが,あてすぎると目に障害が出る(眼の白濁。(*12))ので扱いが難しいようです。
 一方,フルスペクトルライトの方は紫外線は弱めなので,一日10~12時間照射しても問題ない,ということです。また,フルスペクトルライトのもう一つの利点として,太陽光に近い色温度のため,ストレス緩和や正常な行動パターンを促す助けになる効果もある,とのことです(*6)。
※ 色温度:真昼の太陽が 5500 K(ケルビン),演色評価数(CRI):屋外自然光は 100。で,TRUE LIGHT:CRT 91,5500K に対し,白色蛍光灯:CRI 68,4500K,昼光色蛍光灯 CRI 75,6500K,といったデータ(グラフ)が紹介されています(*17)。ただ,この図を見ると,一般の白色蛍光灯,昼光色蛍光灯では,320~380nmのUVA(Near-UV)は確かに殆ど出ていないのですが,肝心な290~320nmのUVB(Mid-UV)は,屋外自然光やTRUE LIGHTと同程度の値に見えるのが不思議なところです。
 なお,照度について,晴天の屋外10万ルクス,トゥルーライト1000ルクス,といった値が,甲羅同盟(山内氏)で報告されており,桁が2つほど違いますので,どうしても自然光(太陽光)にはかなわない部分はありそうです。(自然光の方も日中ずっとその強度ではないでしょうけど・・・。)
 また,ライトそのものの(白色蛍光灯としての)寿命に対し,紫外線UVB成分が出なくなるまでの寿命についても考慮する必要はあるでしょう。定格寿命 5000時間と書かれた製品の場合,1日12時間照射した場合417日(すなわち約14か月)の寿命ということになります。
 熱帯魚用の点灯器具を使用する場合,水をかぶったり落下防止のためにガラスやプラスチックのフタをして,その上に点灯器具を乗せるようにたいていマニュアルに記載されていますが,亀飼育で,これをやりますとせっかくの紫外線(UVB)が,そのフタの材質に吸収されてしまいますので,危険なようでも,中間に何もはさまずに直接照射するようにする必要があります。落下防止のためには,ガムテープ等で器材を水槽に補強・固定するのが安全でしょう。あるいは金属製の網を中間に置くのも有効ですが,網の分だけ照射量が少なくなる点は留意する必要があります。
 点灯器具の内側の反射板がプラスチックの場合は,紫外線はそこで吸収されてしまい,反射板の役目を果たしませんので,アルミホイル等を内側に張る等の工夫をすると紫外線量UPの効果が期待できます(*22)。最近の製品で,同様のことをスプレー式(缶)で光反射塗料を塗ることで行うものも出てきているようです。
 他,亀が季節を知る手段としての日照時間の設定(変化)もポイントの一つです。春先,日照時間が長くなることで繁殖期を知ったり,秋,日照時間の短縮で,冬眠時期を知ったり(*5)。この目的の達成にはタイマーがあると便利でしょう。もっとも,日照時間だけでなく温度変化も重要な要素のはずで,室内で本格的に自然を再現しようとすると,結構面倒かもしれません。本によっては,複数のタイマーを使って,昼の高温時間帯や朝夕を再現したりと,様々な工夫を提案しているものもあります(*22)。
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【22】ガラス越しの日光浴は効果ありますか?

 赤外線を通す(体を暖める)効果については問題ないでしょうが(人間だって,ぽかぽか暖まるのが実感できますから),ビタミンD3合成に必要な220~320nmの紫外線(UVB)についてはどうなのか,それが問題です。
 「理科年表 昭和59年」の「物理化学部」「光」に「光学材料の分光透過率」(厚さ1cm,表面反射による損失を含まない)というのが載っています。表中,単位はマイクロメートルで表記されていますが,千倍すればナノメートルになります。ちなみに,可視光線は380nm(紫)から770nm(赤)の範囲です。これをみますと,
(a) 「フリント硝子」(鉛入りガラス。屈折率大)は440nmから急激に透過率が下がりはじめ,320nmでほぼ零となる。
(b) 「クラウン硝子」(鉛を含まない。屈折率・分解能小。普通のソーダ石灰ガラス,他)は420nmから低下,300nmでほぼ零となる。320nmあたりはその急激な変化の途中にあり20~50%程度の透過率。
(c) 「WG8 ショット製の無色ガラス」の場合,400nmからゆるやかに低下し,280nmあたりで透過率は60~70%程度ある。250nmでも透過率約20%はある。
(d) 蒸留水は,360nmあたりからゆるやかに低下,200nmでも透過率は90%ある。
といったことがグラフから読み取れます。なお,最近の「理科年表」からは本データの掲載は削られてしまっているようで,残念です。図書館で探せば旧版を見つけられるかも。

 クラウン硝子が,ごく一般のガラスと考えられ(*26),これは,「世界のカメ II 飼育・繁殖のすべて」に「ガラスは300nm位までの紫外線を吸収してしまうので,窓越しの太陽光は理論上,意味が無いとされていますが,幼体がしっかりと育っている例が数多くあるので,300~320nmの波長の部分が,ビタミンD3の活性に役立っているものと思われます。」(補足:「活性」は「合成」が正しい。(*4))に対応するものと思われます。しかしながら,一般家庭のガラス,とくにマンション等のガラス(厚さ6.8ミリの網入りガラス)での紫外線測定器による実測ではUVB成分が殆ど無かったとの報告(甲羅同盟。ねーる氏)もあり,実際に室内に紫外線UVB成分が届くかどうか,あやしいところがあります。紫外線が皮膚ガンの元凶として騒がれている昨今では,窓ガラスの材質に改良(改悪?)が施されている,というのは,いかにもありそうなことに思えます。
 ガラス越しの日光浴について,ガラスが紫外線を吸収する点については多くの書物に記載がありますが,それでも有効としているものと,全く意味がない,としているものとがあり,いずれも実際のデータ(透過率の具体的な数値)が無いのには,困ったところです。(実際の飼育の結果,ガラス越しでも問題なく健康に飼育できた,皮膚病が直った,という,やや結果論的なデータはあります。) ともあれ,ガラス越しでない光の方がより好ましいことだけは確かなようです。

  (a) ガラス越しの日光浴も効果がある,としているもの
    ・「ミドリガメの飼い方 ~水生ガメの飼育と繁殖~」(*3)
    ・「世界のカメ II 飼育・繁殖のすべて」(*21)
  (b) ガラス越しの日光浴は効果がない,としているもの
    ・「新版 カメの飼育ガイドブック」(*6)
    ・「爬虫類・両生類200種図鑑」(*20)
    ・「爬虫両生類飼育図鑑  カメ・トカゲ・イモリ・カエルの飼い方」(*22)
 なお,ガラス越しの日光浴時の注意点としては,水槽の温度が上がりすぎないようにする点が挙げられます。亀だって日射病にかかるのですし,あまり熱くなっては,ゆだってしまいます。
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【23】フィルター(濾過装置)はどの程度有効ですか?

 フィルター(濾過)の働きは,おおざっぱに分けて,次の2つから成ります(*19)(*24)(*27)。

(a) 物理濾過
 スポンジや砂利等により,大きなゴミや浮遊物を取り除くのが「物理濾過」です。これに活性炭(多孔質物質)による「吸着濾過」を含めて「物理化学的濾過」と呼ぶ場合もあります。活性炭は即効性ですが,その分寿命が短い消耗品といえます。もっとも,スポンジにせよ砂利にせよ,洗浄で再利用できるとはいえ,やはり寿命はあります。

(b) 生物濾過
 亜硝酸菌(ニトロソモナス),硝酸菌(ニトロバクター)といった硝化細菌により,腐敗等(従来栄養細菌)によって生じたアンモニウムイオンを亜硝酸イオンを経て硝酸イオンに酸化して低毒化するものです。有毒なアンモニアと毒性がやや低いアンモニウムイオンは平衡下にあり,アルカリ性が強いと,アンモニアの量が多くなる傾向にあります。また,硝化細菌は好気性細菌なので,酸素の充分な供給が必要です。
 一方,嫌気的条件で,硝酸イオンを還元して亜硝酸イオン,さらにアンモニウムイオンに変化させる硝酸還元菌(プソイドモナス,ミクロコックス,チオバチルス)も自然界の土壌中に存在しますので,注意が必要です。
 さて,亀の場合,排泄量が多い上に,エサを食い散らかすので,水を汚す程度が半端ではありません。また,排泄物のその大きさのため,濾材が目詰まりしやすく,きめの荒い濾材(スポンジ等のフォーム(発泡剤)や粒状のもの)を使う等の工夫が必要になってきます(*6)。さらに,尿成分は,熱帯魚(硬骨魚類)ではアンモニアなのに対し,水棲ガメでは人間と同じ尿素ですので,尿素からアンモニアを生成するプロセスが(熱帯魚飼育に比べ)余計にかかる計算になります。亀飼育においては水草を入れない場合が多いのですが,その場合,最終生産物である硝酸イオンを吸収してくれるものがないことになります。
 一般に学校では,爬虫類の尿は水に溶け難い「尿酸」と習いますが,乾燥地に住む亀類は確かにそうなのですが,湿潤な場所に住む亀類は尿素を排出します(*19)。もっとも,どちらか片一方という訳ではなく,人間でさえ,尿中,尿素2%に対し,尿酸0.05%を含みます。ともかく受験の時は気を付けましょう(^^)。
 結局のところ,フィルターは水替の頻度を多少緩和してくれる程度にすぎず,小型の熱帯魚飼育のときのように,数ヶ月も水替え不要といったようにはいかないようです。フィルターの物理濾過によって水が一見透明に見えても,アンモニアや硝酸塩が多い場合がありますから,やはり注意は必要です。(匂いで見当つきそうではありますが。) 亀は汚れた水は飲まないため,脱水症状を起こすこともある,とのことですが,残念ながら,どの程度の汚れでそういった状況に至るのかの具体的なデータはないようです。
 フィルターはものによって性能にだいぶ差がありますし,水量によっても当然ながら違ってくる訳ですが,水替え頻度の目安として,フィルター無しでは週1回から数回,あるいは毎日水替えしなければならないのが,フィルター有りですと,
  ・3か月に1度(*15)
  ・1~2週間に1回,水槽の水50~60%の割合(*12)
  ・1週間に1度(*2)(*14)
と多少緩和されますが(最初の3か月に1度というのはあやしい気も),大した効果なしとして,効用を疑問視している本もあります(*10)。
 フィルターの他の効用としては,
  ・水流をつくる(ヒーター使用時,攪拌により水槽内の温度の均一化に役立つ)。
  ・エアーポンプ式あるいはエアレーション可能なものの場合,溶存酸素の濃度を高め,亀の呼吸(皮膚呼吸,粘膜呼吸等)の一助になる。(*22)
といったものもあります。
 フィルター設置に際しては,吐出口(吐出エルボ)やパイプ等に亀がはさまって身動きが取れなくならないように気を付ける必要があることを付け加えておきます。また,必然的に水位は高めにすることになるでしょう。
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【24】フィルターにはどんな種類がありますか?

 まずは駆動系(動力)による分類を。「エアーポンプ」(エアーリフト方式)と「水中ポンプ」の2種類に大別されます。後者には「水陸両用ポンプ」として機能するものもありますが,それは「水中ポンプ」に含めるものとします。

【エアーポンプ式(エアーリフト式)】
 空気を送るもの。それだけでは,水中に空気(酸素)を送り込むエアレーションの働きしかありませんが,水中のパイプ状の中をくぐすことで,空気の泡が下から上に登ること(エアーリフト)で,水が泡に押される形で水流を生じ,その水流を利用して濾過を行うものです。
 利点は次の通り。
・駆動系が外にあるので,メンテナンスが楽。ポンプ自体の分解掃除も殆ど不要。
・エアレーションとしても機能。亀と一緒にメダカや金魚を同居させているときにとくに便利。フィルターが目詰まりしても,エアレーション機能は有効なので安心。
・ポンプとフィルターの組み合わせが自由。ポンプは汎用品として使える。
・エアーチューブを2又分岐させたり,加工・転用が容易。
・万一水位が下がってフィルターが機能しなくなるような場合でも,ポンプ自体に影響はない。空炊きの危険性はもともと無い。
・安価。濾過用マットは汎用品を買って自分で切って流用すればさらに安価。
・亀が,エアーチューブをはずしたり,フィルターを動かしたりしても,部屋が水びたしになるようなことはまず無い。

 一方,欠点は,
・仕組み上,吐出口を水面より高くすることが出来ない。したがって,水位に気を付ける必要がある。(水位がある程度高くないと使いにくい。)
・水流は弱め。また,水流を実際に確認するのがやや面倒。(泡が流れていくので確認できる。)
・ポンプの設置場所に制約。水が逆流しないよう水槽(水面)より高く設置する必要がある。もっとも逆流防止弁を付ける手がある。)
・ポンプ自体の駆動音(振動音)が気になる。
・送出する空気の量が多すぎる場合,泡のはじける音が結構うるさい。
といったようなところです。やはり一番の魅力は「安価」でしょう。フィルターを選ぶ楽しみ(?)も意外に大きいかもしれません。

【水中ポンプ式】
 空気ではなく実際に水そのものを動かすもので,
・水流を実感できる。(吐出量が保証されている。)
・フィルターの構造さえしっかりしていれば(吸水口が水槽の下の方に取れれば),吐出口は水面より高い位置にあっても問題なく使える。
・ポンプの駆動音は静か。
といった利点があります。一方,
・構造が複雑で,分解掃除はやや面倒。
・殆どがフィルターとセットで設計されており,自由な組み合わせは難しい。(一方,フィルターに使用する材は自由に選べるものが多い。)
・フィルターの構造上の問題のため(吸水口の設置位置のため),水位を相当高くしないと使えない製品がある。
・エアレーション機能を内蔵しているものもあるが,内蔵していない製品もむろん有る。エアレーションを併用したい場合には注意。
・寿命が短め。
・高価。
等が欠点といえます。

 次に,設置場所や形状によるフィルターの分類です。

【外部式フィルター,外部式キャニスター(密封缶)型フィルター】
 水槽とは完全に独立したドラム缶状のフィルター。水槽と独立しているため容量を大きく取れ,濾過能力は極めて高い。ついでに価格も一番高い。缶内部に水中ポンプを内蔵し,パイプ,ホースで水槽の水を引き込み,再び水槽に戻す形を取る。最初の呼び水を行う際,従来は口で吸わなければならない危険があったが,それを改善する機能や周辺器材が発売されているものがあるので購入時は注意した方がよい。濾材を自由に選択できる自由度の高さも利点。ヒーター,サーモスタットを内蔵した製品もある。

【内部式フィルター,箱フィルター,水中フィルター】
 水槽内に設置する水中ポンプ付きフィルター。箱型の構造で,水中ポンプ,濾材(スポンジが多い),吸入・吐出口等が一体化,コンパクトにまとまっている。パイプ,ホースは不要で箱をキスゴム(吸盤)で水槽の壁面に固定して使う。流量調整機能や,ディフューザー(エアレーション)機能,水流の方向調整や吸着用カーボンをセットできるもの,横にしての使用を考慮したデザイン(設計)になっているもの,濾材部分がカートリッジ式でとりはずして掃除しやすいもの,等がある。横にしてセットできるものについては,水位を低くしているときに便利。箱型(四角柱状,円筒状)でなく,ポシェット型(バッグ型,陸型)で,吐出用パイプを付ける型のもあるが,これもこの分類に含めておく。

【上部フィルター】
 水槽のサイズに合わせて,ライト(蛍光灯)と並べるような形で上部に設置する水中ポンプ付きフィルター。水中ポンプで水を吸い上げ,上部に詰めた濾材にて濾過を行った後,水をまた,水槽に戻す構造。構造上,水位はかなり高めにする必要がある。濾材の選択については自由度が高く,また,揚水後・濾材に散水する形を取るため,空気とよく接触し,好気性細菌である硝化細菌の活動にプラスとなる効果がある。水槽上部に設置していることから,メンテナンスは容易で,濾材の状況(汚れ具合,硝化細菌の活動の具合。色で判断)も確認しやすい。水の落下の段差が大きくなりやすく,はねたり音が大きくなったりしやすい。

【外掛式フィルター,リム(淵)フィルター】
 上部フィルターと同様だが,水槽の上部に置くのではなく,水槽の縁に掛ける形を取る。利点・欠点は上部フィルターに準じるが,水槽のサイズにぴったり合う必要のないのは利点。水槽を買い替えたときにフィルターを買い替える必要がない。ただし,容量が小さ目の分,濾過能力は上部フィルターよりは弱め。

【底面フィルター,下敷フィルター】
 多数の孔の開いた板状のものを水槽に敷き,その上に砂利を乗せ,底へ引き込むような水の流れを起こして,砂利を濾材として使う形のフィルター。砂利だけでなく,中間にスポンジ状のマットを敷くものもある。駆動方式は,エアーポンプ式と水中ポンプ式の2種類がある。エアーポンプ式の場合,吐出口の位置の調整が面倒で,場合によっては,パイプをカットする等の工夫が必要になることもある。亀が挟まれないよう,吐出口のパイプと水槽壁面の距離に注意。

【スポンジフィルター】
 スポンジが水槽内に露出するタイプや内蔵のタイプがある。エアーポンプ式と水中ポンプ式と両方のタイプがある。スポンジ部分だけを上部フィルター,外掛式フィルターと組み合わせることも可能。スポンジは物理濾過と生物濾過の両方に作用する。露出している分,メンテナンス(掃除)は楽だが,亀にひっかかれ壊れる可能性もある。亀が齧る場合もあり,露出するタイプの場合網で覆うなどの工夫が必要だろう。パイプを水槽壁面にキスゴムで取り付ける際,亀が挟まれないよう,その隙間の空間に注意。中には沈めて使う(投げ入れ式の)ものもある。一般にはスポンジ式は稚魚を吸い込まない利点があるとされている。

【投げ込み式フィルター,投げ入れ式フィルター,水中フィルター】
 エアーポンプ式で,水槽壁面に固定するのではなく,投げ入れるような形で底に沈めて使う。濾材(スポンジ,小石)は通常プラスチックケース(円筒状,三角柱状,箱状)の内部に格納されているが,露出しているものもある。一般に小型のため濾過能力は小さいが,池に沈める大型のタイプもある。
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【25】フィルターを使うときの注意点は?

 亀は排泄物の量が多いですし,エサも食い散らかしますので,フィルターは濾過能力が大きいことが必要です。また,濾過能力が大きい場合でも,水替え作業が必要になります。

 まずは,フィルター購入時の注意点から。

(1) フィルターの構造上,隙間に亀が挟まれて溺れるような危険性はないか?(パイプをキスゴムで止めるタイプでパイプと水槽壁面に亀がくぐれそうな中途半端な余裕があるものは危険。水槽とフィルターサイズに余裕がなくて吐出口と壁面に亀がちょうど挟まりそうな隙間があくようなものは危険。)
(2) 砂利を水槽に敷くタイプ(底面フィルター)は水替えの際,砂利を洗う手間がかかるのを覚悟すること。もっとも,砂利を簡単に洗えるような専用器材も販売されてはいる。
(3) 底面フィルターは,亀が砂利をほじくりかえすため,好ましくないとしている本もある(*14)。一方,音が静かで濾材の交換も簡単として一押しとしているものもある(*5)。さらに,砂利はあまり深く敷かず,1.5cm程度で充分としていたりするので,迷うところではある。
(4) 大型の外部フィルターは効果が最も大きいが,高価で場所も取る。濾材は,生物濾過より物理濾過を重視し,きめの細かいウール濾材ではなく,フォーム(発泡材,スポンジ等)やきめの粗い粒状の濾材が良い(*6)。幼体や小型の亀の場合,大型のフィルターでは水流が強すぎることがあり,その場合は内部式フィルターが好ましい(*6)。
(5) 上部フィルター,外掛け式フィルターは,亀の低い水位でもちゃんと揚水できるかどうか,事前に確認しておく。他のフィルターでも,使用可能な水位には留意する。
(6) 上部フィルター,外掛け式フィルターは,底面フィルターの吐出口が高い位置にあるような場合,水跳ね(ホットスポットの熱くなった電球に水しぶきがかかると危険)や,水の音が大きくなりがちな点に注意する必要がある。
(7) エアーポンプ式の場合,送出する空気量が多いと泡のはじける音がうるさい。ホースに取り付け流量を調節する器具がポンプに付属しているものもある。
(8) 濾材がスポンジ(フォーム,発泡材)のものは,メンテナンスが容易。露出しているもの(スポンジフィルター)については,亀が接触する機会が多く,破損(ちぎれたり)に気をつける必要があろう。
(9) ヒーター使用時は,水流の向きを調整できる方式のフィルターが水の攪拌と水温の均質化に便利。
(10)生物濾過を重視するなら,好気性細菌である硝化細菌のためにエアレーション機能があると良い。あるいは濾過した水を高い位置から水面に落とせば,同じ効果が得られる。
(11)濾材の汚れ具合が直接見えるような構造になっていると便利。
(12)シャワーパイプが使えるものについては,エアレーションの代わりになると共に,夏場,多少とも水温を下げるのに役立つかもしれない。

 次に,フィルター運用時の注意点を。
(1) フィルターを使用することで水替えの頻度が少なくなるとはいえ,零になる訳ではない。週に1度ぐらいで水替えを行うのが好ましい。また,毎日コップ1~2杯分の水を取り除き,その分だけ新しい水を補充するようにすると,水替えの間隔を多少なりとも伸ばせる(*15)。フィルターによって水の透明度が高い場合でも,尿素やアンモニア,亜硝酸,硝酸等の濃度が高くなっている可能性があるので,注意。
(2) フィルターの目詰まりについては,水の流れでも判断できる。目詰まりすると,ポンプに余計な負荷がかかる。
(3) 生物濾過時は硝化細菌(バクテリア)の繁殖(茶色になる)が必要ではあるが,汚れすぎによる雑菌繁殖もまた,亀の皮膚病の原因になりうる。フィルターも定期的な掃除が必要。ときには,ポンプ自体を分解・掃除する必要が出てくるかもしれない。(マニュアルにその方法が記載されているものもある。) また,濾材も洗浄で再利用可能とはいえ,やはり寿命があることにも注意。(活性炭の場合は完全に消耗品。)
(4) 生物濾過重視時は,硝化細菌を殺さないよう,水槽内の水で洗うか同じ温度の水で濾材を洗う等の工夫が必要になる。が,もともと排泄物の多い亀には生物濾過は意味がなく物理濾過で充分とするなら,水道水で直接洗ってもよい。また,それを勧めている本もある(*6)。水道水の塩素分で多少殺菌されることになろう。
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【26】衛生面で注意することはありますか?

 人間にとっての衛生面と,亀にとっての衛生面の2つが考えられますが,互いに密接に関係しているともいえます。亀の水槽を不潔にしていれば,亀や水槽に触れる人間の方にも影響あるでしょうから。
 まずはとかく有名なサルモネラ菌の問題から。本家米国では,「サルモネラ菌規制法」(アメリカ保健法,連邦法)が存在し,甲長4インチ(10cm)より小さな全ての水棲ガメの販売を禁止しているほどです(*5)(*14)。
 1910から1920年代にかけて,アメリカ ルイジアナ州を中心に生物教材・ペットとしての爬虫類・両生類の養殖(!)が産業として定着し(*28),米国本国はもとより世界的なミドリガメの大流行をみた訳ですが,1970年代初めに子供に対するサルモネラ菌感染をもたらす元凶とされ(1970年初めまでに約25万件を記録!),結果,1975年に米国食品医薬品局(FDA)により
  ・合衆国国境を越えた亀の幼体の輸入を禁止
  ・合衆国国内での販売に制限(10cm未満の全ての水棲ガメの販売禁止)
といった事態に至り,カナダもこれに追従し現在に至っています。
 ミシシッピーアカミミガメは日本ではミドリガメとして1950年代半ばあたりから輸入され,現在では北海道から沖縄まですっかり日本全国帰化してしまった訳ですが,米国での騒ぎと同時期にやはり日本のマスコミで大々的に(輸入ミドリガメによるサルモネラ菌感染症の件が)取り上げられたという話です(*28)。1985年以降でも日本国内でときどきミドリガメによるサルモネラ菌感染症は報道されているようで,1997年11月3日 産経新聞朝刊で「ペットの亀から?サルモネラ菌感染 男児に運動障害の後遺症」というのがあります。
 もっとも,サルモネラ菌は,亀に限らず,犬や猫,鳥,豚,ほか様々な動物が保菌している(脊椎動物全般が保有。保菌していても健康なときは大丈夫だったりします)ので,過剰に反応するのは考え物ではあるようです(1997年11月16日 産経新聞朝刊 「生きものと遊ぶ 容易に防げる『人獣感染症』」ほか)。 上記読売新聞に「ペットなどから病気をうつされないための方法」として書かれている,
  ・「(糞の取扱を慎重にし)飼育環境を清潔に」
  ・「手洗い(&うがい)の習慣」
  ・「けじめをつけたペットとの暮らしを守る」(やたらに抱き上げたり一緒に寝ない,口うつしで餌をやらない)
といった常識的なケジメを実行すればよいのではないでしょうか。ただし子供や幼児の場合,亀を反射的に口に持っていったり,衛生面を気にしないところがありますから,その点は留意した方がよいかもしれません。糞の処理や水替ですが,台所の流しを使わないように,と記載している本もあり((*3),(*6)),できるだけ,そうした方がよいでしょう。手洗いも消毒用石鹸(薬用石鹸)ならより安全です(*6)。そういう意味では,水槽の掃除のときも定期的に消毒剤や漂白剤での洗浄を勧めているようです((*5),(*6))。また,動物の世話をしながら食事をしない(*6)というのもありますが,これも常識の範疇でしょう。「小さい子供や老人,抗生物質治療を含む病気療養中の人,免疫機能に作用する薬を飲んでいる人などは,動物に接する時には特に注意すること」(*6)というのもあります。
 サルモネラ菌以外にもカンピロバクター菌(これもミドリガメ他犬,猫等の小腸に生息する菌)による食中毒事件(1991年5月18日 朝日新聞朝刊 群馬版。「食中毒症状の原因はカンピロバクター菌 太田・沢野小」。小学校で集団欠席。原因の菌は特定されたが,感染経路は特定されていない。)等もあり,クレーンゲームのカプセルに付属の説明書「カメの飼い方」(*11)に記載されている「カメに関わらず,どの様な動物でも菌を持っているので,飼育管理と,飼育後の手洗はきちんとして下さい。」というのが一番正しい認識なのでしょう。

 さて,次に,亀にとっての衛生面ですが,水替えをまめに行い,水槽を清潔に保つこと,の一言に尽きるのではないでしょうか。フィルターもある程度効果はありますが,生物濾過としての細菌の繁殖を前提にしている関係上,雑菌の繁殖を逃れることは出来ないでしょう。オゾン発生装置(オゾナイザー)や紫外線殺菌灯(フルスペクトルライトのように上部から照らすのではなく,パイプを通して水を循環させ,そこで照射殺菌する)といったものも販売されており,お金と手間を惜しまなければ,いろいろな器材を使うことができます。もっとも私自身はオゾナイザーを導入したものの,オゾン臭がたまらず,また,ゴム器材がすぐにボロボロになったために,ほどなく撤去したことがあります。水替え時も石鹸や殺菌剤,漂白剤を使うとより衛生的ですが,それらが残留しないようによくすすぐことが必要です。亀自体も甲羅等をぬるま湯を使いスポンジで洗う(薬品類は使わず,スポンジも石鹸等に触れていないもの)ことを勧めているものもあります(*5)。甲羅上に発生しているかもしれないカビの除去を目的としたものだそうです。その際,亀に噛み付かれないよう,ご注意!
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【27】掃除はどの程度の頻度で行えばよいですか? またその手順は?

 掃除の頻度については,フィルターの有無,水量(水槽の大きさと水位),亀の大きさと飼育頭数によっても違ってくるのでいちがいには言えませんが週1回,水全交換,でよいのではないでしょうか?
 掃除の手順については大体常識的なところで良いでしょう。「T.F.H.飼い方マニュアルIV スライダーガメ」(*5)が一番詳しいのですが,他の本や経験をまじえて箇条書きにポイントをまとめてみます。

(a) 衛生上,台所の流し等調理する場で水替(排水)・フィルター等器材の洗浄を行わないこと((*3),(*6))。
(b) 亀を水槽内に入れたまま水槽を洗ってはいけない。別の容器に亀を移してから洗う。冬場,亀がその容器内で冷えてしまわないように注意する。
(c) ガラス水槽の場合,重過ぎ,水を入れたまま持ち上げると底が抜ける心配もあるので,別途ポンプ(サイフォン式,電動式)を使って水を排出する(*3)。フィルターに使用する水中ポンプの種類によっては水替えに利用できるものもある。
(d) 定期的に,石鹸・洗剤や殺菌剤,漂白剤を使って水槽を洗う。洗浄後は,それらが残留しないようによくすすぐ。
(e) 水槽はスポンジ等でよくこすり洗いする。
(f) 水槽のほか,フィルターや甲羅干し用の小島(ブロック)等もよく洗う。フィルターは薬品を使うと生物濾過の効果が無くなったり,プラスチック部分が痛んだりするので注意。生物濾過効果消失については,物理濾過が出来れば充分とする立場もある。
(g) 砂利等底砂を使っている場合は,それも洗う。やはり薬品を使って殺菌し,かつよくすすぐ。
(h) 新しい水を入れるとき,温度を大体同じにしておく(*3)。冬場冷たいままだと,ヒーターがあっても暖まるまで時間がかかり,亀が風邪をひきかねない。その意味では,水替え作業前にお湯を沸かしておくと便利。(作業中忘れて火事にならないよう注意!)
(i) 亀自体も甲羅等をぬるま湯を使いスポンジで洗う。薬品類は使わず,スポンジも石鹸等に触れていないものを使用する。その際,亀に噛み付かれないよう注意する。
(j) 作業後は消毒用石鹸で,よく手を洗う。また,食事をしながら水替え作業をしてはいけない(*6)。
(k) 水槽の周囲の衛生にも気を配ること。人間を感染から守るだけでなく,亀にとっても感染の機会を減らすよう気を配る(*6)。
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【28】1つの水槽に複数飼育する点での注意点は?

 ミドリガメだけを複数飼育することを前提に考えます。生息環境が大幅に異なるミシシッピーアカミミガメのようなヌマガメとホシガメのようなリクガメと一緒に飼うことはまずないでしょうが,同じヌマガメ科であっても生息環境(温度,湿度)が異なったり,泳ぎのうまいもの,へたなものも入れば,食性の異なるものもいます。原産地が異なれば,病原菌に対する抵抗力や感受性も違いますし,その個体にとっては無害な病原菌や寄生虫を体内に保持している可能性もあります。一般に,種や亜種の違うものは別々に飼育した方がよく,雑多飼いする場合でも,同じ分布域のものを一緒にするのが好ましいといえるでしょう(*3)(*6)。 亀ではない他の種との同居はどうか,例えばメダカとかエビやタニシとの同居は,というと,亀が餌と認識してしまい,うまくいかない場合があります。生餌として割り切るなら別ですが。イモリやカエル等皮膚に毒のあることが多い両生類との同居は避けた方がよいでしょう(*22)。
 同じ種を複数飼育する際,次の点に留意すると良いでしょう。
(a) 1匹しか居ない水槽に,新規入手した個体を追加する場合,一定期間(2週間から半年)の検疫期間を設け,まず隔離して様子を見る。これは,新参の亀が保菌していて古株の亀に病気を移すことがないようチェックするためと,様子を観察し病気なら直してやること,癖や性格を把握すること,等を目的とする(*6)(*10)(*22)。もちろん病気の亀を健康な亀と一緒にしてはいけない。
(b) 充分な広さを確保すること。過密状態では,病気が発生・蔓延しやすく,また,亀の攻撃性を刺激しやすい。超過密状態では攻撃する気さえ起きなくなるが,それはそれで問題がある(*6)(*22)。
(c) 甲羅干し用の陸場も広く取り,スポットライトの受光面積も確保すること。「親亀の背中に子亀状態」は面積の狭さを反映しているのであって,交尾時を除けば馴れ合っているという訳ではない(*22)。
(d) 大きさの異なる個体は一緒にしない方がよい。弱い個体を強い個体が攻撃ないしはエサを横取りしてしまい,弱い個体がストレスで拒食してしまうことがある。また,尾を食いちぎられることも多い(*10)。
(e) 給餌のときは,皆がよく食べているかどうか(力が弱く,餌にありつけない個体がいないかどうか)よく観察する。
(f) 繁殖前のオスとメスも交尾の準備が整うまでは分けた方がよい。メスの準備が整わないときには喧嘩になる場合があるので,その場合は,また別々の水槽に隔離する(*5)。

 複数飼育はデメリットばかり目立つようですが,トラブルなく同居できた場合には,社会的関係や行動を観察できる,共有空間を有効に活用できる(スペースの節約)等の利点があるようです(*22)。
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【29】1週間程度の帰省・出張等の留守時はどうしたらよいか?

 「連れて行く」というのも一つの答えでしょうが,出張等のホテル利用の時等はそうもいかないでしょう(^^)。亀を含む爬虫類人気の理由として,
  ・アパート,マンション住まいでも鳴かないので近所に迷惑をかけない。
  ・餌を毎日やる必要がなく短期間の不在等に耐えられるため,独身者にも飼育しやすい。
といったのをよくみかけますが,この場合,後者の例に相当する問いになるでしょう。どういう訳か,この種の問いは切実なはずなのに,きちんと答えてくれる飼育書は見掛けないようです。成体の場合,週に2~3回で充分な訳ですから1週間程度なら餌無しで耐えられるでしょう。実際,「うちのカメ オサムシの先生カメと暮らす」(*8)では,34歳のクサガメの例ではありますが,年に十数回の留守番(最長6日)の件が紹介されています。また,留守ではなく,亀を木箱に詰めて輸送するという荒業ではありますが,「水生のカメは乾燥させないように注意しなければならないが,健康なカメならば3日以内の旅行では水やエサをやる必要はない。」(*15)(ちなみに,米国内では合法的には航空便でしか運べない,とも(*5)。)といった記述もありますので,ちゃんとした水槽の環境なら,おそらくもう少しは大丈夫でしょう。
 熱帯魚用ではありますが,タイマー付きで自動給餌する装置も売られているので,それを使う手があるかもしれません。また,亀の場合,水を汚すのでそちらの方が問題になるかもしれませんが,これもフィルターを使えばある程度緩和できるかもしれません。
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【30】亀を帰省先にもって帰る(移動する)には?

 これも記載されている本が少ないのですが,そこは10cm以下の全ての亀の売買が禁止されているアメリカ。特定の種を除いて捕獲行為は禁止されていませんので,捕獲後の移動・輸送手段について,ちゃんと記載があるのは,ありがたいところです(*15)。

(a) 車で移動する場合
 ダンボール箱の底に藁を敷き,その上に亀を乗せ,蓋を開けた状態で移動する。
(b) 飛行機や汽車で輸送する場合
 丈夫な木箱に清潔な藁か干し草を敷き,水生の亀は乾燥させないようにして,1匹ずつ詰めて運ぶ。亀が健康なら3日以内なら水やエサは不要。輸送時は,「生きた亀 ~ 暖かい所に置いてください」等の指示を記入する。
といったような内容です。都会では藁や干し草の入手は逆に難しいでしょうが,ポイントはおそらく
  ・振動に耐えうるよう緩衝材としての機能
  ・断熱・保温機能
  ・適度に吸水し,湿り気を保つ
  ・窒息防止
  ・干し草は餌代わりになるかもしれない
といったように思えますので,餌の代用機能は別にすれば,他の用品(タオル,新聞紙,他)でも代用できそうです。また,冬場は暖房にも留意した方がよいかもしれません。(使い捨てカイロの使用とか。ただし酸欠になったり,低温火傷の危険性,熱がこもったりしないように注意が必要でしょう。)
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【31】留守中亀をあずかってくれるところは?

 いや~,実のところ,これは私も知りたいです。(全然,回答になってませんね。) 亀等の爬虫類を診てくれる動物病院すら数少ないというのに,まして亀のホテルというのは見つけるのは大変かもしれませんね。とりあえず,ペットホテル,ペットショップ,動物病院,等,電話帳で片っ端からあたってみるとか,するのがよいのではないでしょうか。ちなみに,「爬虫類診療病院・全国リスト」は,「カメカメフェスタ 1st. November,1996記念版 カメの本」(*4)に掲載されています。北海道7医院,宮城県1,茨城1,埼玉2,千葉1,東京5,神奈川5,静岡2,愛知1,長野1,京都1,大阪3,兵庫3,岡山1,徳島1,沖縄1,といった具合ですが,この他にもあるとのことです(リストは掲載承諾を得た動物病院及び獣医師のみ掲載)。
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【32】水槽でなく屋内(陸上)で,室内ペットとして飼うことは可能ですか?

 「お座敷犬」ならぬ「お座敷亀」という訳ですね。下記の事例(書籍)があります。

(a) 「吾輩は亀である 名前はもうある(*31)
 アカミミガメ,18歳,名前は「デカ」,「チュウ子」。豚肉を与えすぎ脂肪過多で失明しそうになって動物病院へ連れて行ったり,後ろ足の膿で切開手術のこととか,クチバシ伸びすぎで削ったり,くる病にかかったとか,部屋での放し飼いの様子とか。著者の職業柄殆どが宗教の話で亀とは無関係の話なのが惜しい。

(b)「うちのカメ オサムシの先生カメと暮らす」(*8)
 クサガメ,35歳,名前は「カメコ」。20数歳から水替えの際,いつものように体を拭いてやった後,偶然,居間の絨毯に放して後,マンションでの「お座敷亀」(?)の地位を得る。日中は室内に放し,夜は水槽に戻す生活。

(c)「呼べばくる亀 ~亀,心理学に出会う」(*9)
 イシガメ,20歳(没),名前は通称「カメちゃん」。就寝用の水桶のあるベランダと室内とを行き来する。上り下りにハシゴを利用するらしい。やはりマンションでの飼育。人の後をついて歩く。

とくに(b)の書籍はオススメです。亀が部屋の地理を覚えること,人と亀のスキンシップ,亀が示す不満のゼスチャー,すべり台の利用,排泄物は殆ど水槽内ですること,乾燥防止の話,等,亀との屋内での共同生活の魅力満載です。
 お座敷亀として室内で飼うときのポイントは,たぶん,以下のようなものでしょう。
(1) 室温や床が充分暖かいこと。
(2) 乾燥に気をつける。(ヌマガメ科の泳ぎの得意な亀だから。)
(3) 排泄に気をつける。(カメコみたいに躾(?)がなっているといいけど,それってそもそも躾けられるものなの?)
(4) 家具の隙間に入り込んで身動き取れなくなったりするのに注意。
(5) 室内に危険なもの(ネコいらずとか)を置かない。ダニ等にも注意。
(6) 掃除はしっかりする。衛生面にも気を配る。
(7) 夜は水槽に戻す。
(8) 食事は水槽内の方がよい。排泄もそこで済まさせるとよい。
(9) 床に近い部分の家具は亀の突進で傷がつくのを覚悟。
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【33】オスとメスはどうやって見分けたらよいでしょうか?

 ミシシッピーアカミミガメ(Trachemys scripta elegans)あるいはアカミミガメ(Trachemys scripta)のオス・メスには以下の特徴があります(*3)(*8)(*14)(*21)。
・オスの前肢の爪は長くなる。成熟したオスはこの爪を使ってメスの頭を撫で,踊るような求愛行動を取る。
・オスの尻尾は長くなる。総排泄孔(肛門)はメスに比べ尾の先端に近い位置(背甲の外側)にくる。また,オスの尾の基部は太い。生殖器を確認できることもある。
・オスとメスではメスの方が大きくなる。オスは大きな個体でも20cmにしかならないが,メスは29cm以上になるものがある。
・オスは老齢化すると体色が(甲羅も皮膚も)黒化することが多い。
・アカミミ(眼の後ろの明るい赤の斑紋)はメスの方がはっきりしている。黒化したオスでは見えなくなることもある。
・孵化温度が27度C以下ならオス,30度Cに近ければメスが生まれる。(温度依存的性決定機構,Temperature-dependent Sex Determination,TSD。)
・オスの鼻先はメスよりも細くとがっている。

いずれ,生まれたばかりの個体の性を判断するのは無理なようで,性成熟(オスは孵化後2~2年半・甲長10cm以上,メスは2年半から3年半で,甲長17~23cm (*2)(*3))を待つしかないと思われます。
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【34】冬眠させるべきかさせないべきかの判断は?

 まず,その年に生まれた幼体は,冬眠させずに,加温して越冬させた方が安全です。自然下では生まれて最初の冬眠で85%が死亡するという説もあります(*5)。
 成体で,翌年の交尾・繁殖を狙うなら,冬眠させた方が効果的です。もっとも,北米の自然環境下では,「生息地域の最も北部以外では,冬眠もしないし,南部のほとんどの地域では真冬でも泳いだり日光浴しているのが見られる」(*14)ということで,冬眠は繁殖に絶対必要不可欠という訳でもないようです。
 結局,冬眠させるか否かの判断は
  ・健康状態
  ・エネルギー(脂肪)の蓄積状態(餌を充分食べていたか,後ろ肢の付け根の状態のチェック,甲長と体重のチェック,等)
をよく見て行うことになるでしょう。秋・晩秋に入手した個体は,健康状態もエネルギー蓄積状態もわかりにくいので,加温越冬させた方が安全です(*2)(*3)(*5)(*6)。
 また,冬眠時に胃腸に食物が残っていると異常発酵して危険ですので(*6),実際に温度が低下し始める前に1~2週間かけて胃腸を空にさせ,最後の3~4日は暖かいお湯に浸し排便させてやります(*5)。冬眠用の温度へは数日かけて徐々に温度を下げていきます。あるいは自然に気温が低下するにまかせれば,自然に亀の食欲がなくなり,この問題は解決されます。
 冬眠できる温度を確保できるかどうかもポイントでしょう。ミシシッピーアカミミガメの冬眠に適した温度については諸説あって,10~13度C(*5),5~10度C(*2)(*6),0~11度C(*3)といったところなのですが,これより温度が高いような,あるいは高くなるような部屋では冬眠が出来ない(さりとて食欲は落ちているので危険),とか,冬眠をしばしば中断され余計なエネルギーを消耗してしまい冬眠完了までエネルギーが持たなくなる,等の問題が出る可能性があり,危険といえます。
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【35】冬眠させるときの注意点は?

 冬眠させるときの事前チェック(健康状態,エネルギー蓄積状態,胃腸に餌が滞留していないこと,冬眠の適温を確保できる環境があること)で問題がなければ,次はいよいよ冬眠の環境を整えてやることになります。
 冬眠の方法としては,水中で冬眠させる場合と土中で冬眠させる場合との2形態あります。共通するポイントは「冬眠に適した温度を保持する」(10~13度C(*5),5~10度C(*2)(*6),0~11度C(*3)と諸説ある。)です。以下,各々の方法について,ポイントを記します(*2)(*3)(*5)。

【水中で冬眠させる場合】
・水位は充分取ることが条件ですが,これも諸説あります。亀が立ち上がって鼻先を出せる程度の深さがよいとするもの(*3)や,底に泥を15~20cm敷く(当然水位はこれより高くなる)(*5)としているものがあります。
・底に泥や落ち葉,砂を敷くと,亀が潜り込むことができ,落ち着きが出る。

【土中で冬眠させる場合】
・底に土を2.5cm程度敷き,その中に亀を入れ,藁,ミズゴケ,落ち葉,土等を軽くかき混ぜたものを亀が完全に隠れるだけの充分な量を上からかぶせる(*5)。
・あるいは,湿らせた土,砂に亀を潜らせ(当然,土・砂の量は多くなる),上に落ち葉,藁,麻袋等をかぶせ,乾燥を防ぐ(*3)。
・または,湿らせた腐葉土や土,30~40cmでもよい(*2)。土(砂,腐葉土)と落ち葉(藁,麻袋)の割合をどれだけにするかで,諸説ある形です。土中で冬眠させるのは,ハコガメやリクガメに使う方法ですが,ミシシッピーアカミミガメ等の水棲ガメにも適用でき,冬眠中の観察が容易であるという特徴があります(*5)。一方,安全性の点から前者(水中冬眠)を勧めているものもあります(*3)。なお,リクガメの冬眠の場合はより本格的で安全な方法~二重構造の箱(ダンボールの内箱をを設け,その内箱と外箱の間を断熱材で埋める。亀が目覚めて誤って温度の低い外箱外壁部分に移動してしまわないような措置)を勧めているものもあります(*6)。

 冬眠前は,1~2週間かけて断食させ最後の3~4日は暖かいお湯に浸し排便させてやるようにすると(*5),あるいは自然に気温が低下するにまかせて亀の自然な食欲減退と胃腸を空にすることで,冬眠中の消化器内に滞留した食物の異常発酵防止に役立ちます(*6)。冬眠用の温度へは数日かけて徐々に温度を下げていきます(*5)。また,なにかのきっかけで冬眠を中断して加温してしまった場合は,再度冬眠させずにそのまま加温飼育させた方がよい,とのことです(*3)。とくに土中冬眠で,冬眠中に排尿していた場合には,急性脱水症状を起こす可能性があるので冬眠から強制的に起こすことも必要になります(*6)。
 とはいうものの,1996年11月28日の読売新聞(東京読売夕刊)の「[冬支度](4)カメの冬眠、水の凍結に注意」の,東京動物園協会 中川志郎 理事長によると,「同じ温帯産のカメでも北米産のミドリガメ(アカミミガメ)の場合は,冬眠の仕方が日本産のものと異なるので注意が必要だ。冬眠中でも寝たり起きたりしており,動き回ることがある」ということで,となると,
・冬眠中に起きて動き回ることを前提にすれば,排尿の可能性もそれだけ高くなるので,水中冬眠が安全。泥等をあまり入れすぎて水が飲めなくなるのも危険だろう。
・冬眠中に起きれば当然その分エネルギーを消耗するから,事前の状態チェックはよりシビアに行った方がよいだろう。
という気がします。ただし,いずれについても,著者による飼育・冬眠実績がある訳ですから,あとは飼育者各々自らの判断で対処するしかないでしょう。私の実家東北は宮城県では,水中冬眠(水槽は室内の玄関に置いている)でここ5年ほど問題ありません。暖かい日には動き回っているとのことです。子亀時代から2年を冬もヒーターでぬくぬくと過ごして甲長が10cm前後になってからの冬眠ですから,体力は充分ある状態での冬眠とは言えます。
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【36】繁殖させるにはどうしたらよいか?

 まず,性成熟したオスとメスが必要です。って,これは当たり前ですね。繁殖を交尾と産卵に分けて,前者(交尾)の条件から順に,箇条書きに記してみます(*2)(*3)(*5)(*6)。私自身は経験がないので(飼っているのはすべてメス。無精卵はここ3年ほど産んでます),受け売りの点はご容赦ください。資料は,「ミドリガメの飼い方 ~水生ガメの飼育と繁殖~」(*3)と「T.F.H.飼い方マニュアルIV スライダーガメ」(*5)が最も詳しく,相補完するような部分もありますので,この2冊は常備した方がよいと思われます。

(a) 交尾の準備:
・オス,メスが存在し,共に性成熟していること。飼育下でオスで3年半,メスで4年半。老齢化したメスも好ましくない。
・冬眠させる。あるいは,冬期(1月から)の6~8週間,10~15度Cの低温に保つ。
・同時に,ライトの照射時間も10時間に短くする。
・冬眠後あるいは温度・照射時間復帰後から2週間以降(あるいは春先から夏にかけて),交尾が起きるが,10~15度Cの冷却期間に交尾することもある。
・交尾用の水槽は,岩等の障害物は除き,水を約13cmほど入れる。(水中で,オスは長い爪を使って求愛行動を取り,交尾する。)

(b) 交尾に際して:
・交尾に際しては,オスとメスは別々に事前隔離しておいて30~45分間一緒にし,交尾すればよし,しない場合は再び隔離して1,2日後に試みる,という方法を勧めているもの(*5),数ペアいると交尾の成功率が高くなるとするもの(*3),水棲ガメのオスが複数居るとメス獲得のためのオス同士の喧嘩が過激なので注意が必要(よく観察し,すぐ引き離せるようにする)とするもの(*6),オスが1頭にメス複数頭は良いが,オス複数頭だとメスへの負担が大きく交尾がうまくいかないとするもの(*2)等,諸説ある。
・交尾にかかる時間は10~15分。
・交尾終了後は再び隔離するのがよい。
・2週間以内に再交尾させてもよいが,それ以降は妊娠期のため避ける。

(c) 産卵に向けての環境整備:
・妊娠期間の平均は約2か月。
・妊娠中は食が細くなったり偏食したりすることがあるが,体重は増加する。(いろいろな餌を与えてみること!)
・産卵直前の1,2週間になると,産卵場所を探すような行動が見られる。
・産卵準備は1~2日以内に行われる。
・産卵場所としては,陸場に,土(あるいは砂)と,ピートモスやバーミキュライト等を混ぜたものを10cm(30~50 cmとしているものもある)ほど入れる。メスの行動を見極めて産卵用の容器(陸場のみ)に移すか,水場はあっても陸場の方はそのまま産卵できるような形で準備する。
・メスの具合が悪かったり,産卵に適した陸場が無いと,自然な産卵が出来ず,卵詰まりを起こし生命に危険が及ぶ場合がある。
・水中に産み落とされた卵はそのままでは窒息してしまうので注意する。発見が早ければ助かることもある。
・産卵数は2~20個と幅がある。
・産卵は2~4週間の周期で行われる。1年に5~8回産卵することもある。
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【37】生んだ卵を孵化させるためには?

 まず最初に気をつける必要があるのは,学校でヒヨコの孵化で学んだような定期的に卵の向きを変えること(転卵)は,やってはいけない,ということです。亀の場合にそれをやると,胚がつぶれてしまうのだそうで,産卵後2~3日の胚発生前は向きを変えても大丈夫でも,それ以降は危険になります。マジックペン等で卵に印を付け,卵の向きが変わらないように固定する必要があります(*1)(*2)(*3)(*5)(*6)。
 では,以下に箇条書きでポイントを記します。
・亀は産卵後自分で卵を暖めることはないので,産卵後すぐにあらかじめあつらえた孵化器に卵を移した方がよい。
・孵化器の構造としては,適当な大きさのケース(プラスチックケースが便利)に消毒したバーミキュライトやミズゴケ,砂等を敷き,湿らせた上で(ビショビショはうまくない),卵を向きが変わらないような形でセットする。呼吸のための穴を幾つか開けた蓋をセットし,乾燥を防ぐと共に,温度を28度C前後に維持する。温度維持はパネルヒーターでも良いが,定期的に水をスプレーして湿度を維持する。あるいは,さらに外箱(水槽)を用意し,水を入れ(卵の入ったケースは水面より高い位置にブロックの上に乗せる等してセットする),水中モーターで保温する方法もある。外箱の水槽には湿気を逃がさないようガラス等で蓋をするが,一方で酸素供給のため,エアーポンプで水中に空気を送る。
・卵は定期的に観察し,腐った卵(無精卵の場合もある)は捨て,カビが生えかかったら,殺菌剤(うがい薬等)で軽くぬぐったりする。
・孵化に要する期間は55~85日。
・孵化温度が27度C以下(24度C)ならオス,30度Cに近ければメスが生まれる。(温度依存的性決定機構,Temperature-dependent Sex Determination,TSD。)(*3)(*14)
・孵化後,幼体はすぐには出てこず,殻を卵角(約1時間後に自然に抜け落ちる)で破って充分な酸素供給が可能になった時点でさらに1日から数日,殻の中に留まる。卵黄嚢(栄養を供給していた袋)はさらに栄養分を吸収された後,自然にはずれる。無理に人手ではずしてはいけない。孵化直後は丸まっている(腹甲の真ん中で折れ曲がっている)が,数日で真っ直ぐになる。
・手助けのつもりで,殻をむいてやらないこと。1日から数日の間殻に留まるのは,亀自身が周囲の安全を確認する意味と,卵黄嚢に残った栄養分を吸収し,力を蓄える意味がある。
・孵化直後の幼体の甲長は約2.3cm,体重は約3.5gほど。
・孵化後1週間は餌は不要。
・生まれたばかりの幼体は泳ぎがへたで溺れ易いので注意。
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【38】事情により飼いきれなくなってしまいました。自然に帰してもよいでしょうか?

 実に難しい問題です。ミシシッピーアカミミガメが外国産で,しかも養殖された亀であることが一層問題を複雑にしている気がします。繁殖に成功して生まれた子ガメの引き取り手が見つからない場合も同じ問題に直面することになるでしょう。
 原産地のアメリカで次のような議論がある点には注意した方がよいでしょう(*5)。
(a) 亀を自然に帰すのは,野生のストックを補充する立派な意味がある。
(b) 飼育下で繁殖させた亀が潜在・顕在を問わず細菌に感染していて,野生個体にダメージを与える可能性がある。
(c) 配合飼料に慣れた個体を野生に放すと,餓死する危険性がある。
うち,(a)は日本では外国産の亀を日本国内に放すことになるので,この論法は通用しません。
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【39】最近亀に夢中です。世の中には「ミドリガメ症候群」なるものがあると聞きました。不安です。

 「ミドリガメ症候群」は,ミドリガメに話しかける形でしか他人と会話ができない病気で,いわば亀をマイク代わりにしているようなものです。人と会話しないで都会生活はできませんので,いつでもどこへでも,亀を連れて行くことになります。職場のハンバーガーショップでは足元のダンボール箱に入れて伏せ目がちにお客に応対し,草野球をするときはキャッチャーのポジションでプロテクター代わりに腹にくくりつけ,公園のベンチで寝転んで読書するときは枕代わりに,そして,一般の外出時にはバッグに詰めて運ぶといったような。病気のきっかけは,逆さまにひっくり返され,くるくる回されて強制的にブレイクダンスを躍らされている亀を見ているうちに催眠術にかかったようにそういった心理条件にはまってしまう,というものです。しかしご安心を。これは小説の中の設定でして,実在しない病名です。もっとも,「ミドリガメ症候群」(*29)の著者の新井千裕氏は,「西洋便器の蓋みたいに大きなミドリガメ」と表現しており,そんな大きなミシシッピーアカミミガメの甲羅が緑色をしているはずはない,といった基本的な疑問は残ります。
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【40】ミドリガメ飼育に役立ちそうな本にはどんなものがありますか?

 「ミドリガメ」や属名の「スライダー」が書名についているようなものはまず無条件にオススメです。それ以外は,どうしても汎用的な記述になりがちです。1997年時点で下記のようなものがあります。

(1)「ミドリガメの飼い方 ~水生ガメの飼育と繁殖~」(*3)
 樋口 守 著,香柏社,1996年12月初版発行,1554円(税別),ISBN4-88144-302-X。
(2)「T.F.H.飼い方マニュアルIV スライダーガメ」(*5)
 JORDAN PATTERSON 著,志村 真紀 訳,株式会社リアルエステイト研究所,原著は1994年のCopyright,2331円(税別),ISBN4-947708-03-4。
(3)「T.F.H.飼い方マニュアルVI クーター類・スライダー類・ニシキガメ」(*14)
 JERRY G.WALLS 著,畑 佳子 訳,株式会社リアルエステイト研究所,1997年8月初版発行,原著は1996年のCopyright,2286円(税別),ISBN4-947708-05-0。
(2)(3)は翻訳物なので,日本の本とはだいぶ違った印象を受けます。現地の自然環境や実際の亀の生活,サルモネラ菌にまつわる話,分類学上の混乱の話(これは,亀のことを様々な事典で探す際にぶつかる問題なので,意外と影響が大きいです),等,興味深い事柄も多く載っています。

 亀を飼育していく際,病気対策は避けて通れないでしょう。次の本が詳しく,オススメです。
(4) 「世界のカメ III 分類と病気」(*16)
 加藤 進 著(病気の項:高橋 功 著),(株)クリーンクリエイティブ,1996年5月初版発行,3800円(税込)
(5) 「新版 カメの飼育ガイドブック」(トータス・トラスト公認,増補改訂版)(*6)。
 A.C.ハイフィールド 著,日向野ブレンダ 訳,真菜書房,1997年4月初版発行,2200円(税別),ISBN4-916074-11-4。
(4)は私自身,アカミミガメの水難事故・急性肺炎でお世話になった動物病院の先生が執筆されたもので,写真(レントゲン写真含む)も豊富です。(5)は水棲ガメよりはリクガメ(トータス)の方が詳しいのですが,24時間体制で亀の診察を受け付けてくれる病院や保護地区がある亀の研究保護団体「トータス・トラスト」(イギリス ロンドンに本部有り)の創始者・主宰者の肩書きは伊達ではない全般的な詳しさです。(読み終わるのに一番時間がかかった本です。)

 亀の居る生活,亀と共に暮らす生活をイメージしたいのなら
(6) 「うちのカメ オサムシの先生カメと暮らす」(*8)
 石川 良輔 著,八坂書房,1994年4月初版第1刷発行,1997年8月第5刷発行,2000円(税別),ISBN4-89694-645-6。
がオススメです。室内で放し飼いし,家族の一員として暮らす亀とその暖かみある文章にほのぼのしてしまうこと,間違いなしです。著者は昆虫学者であり,ツボを押さえた文章と写真とスケッチ,そして,元教え子の(正確には修士論文発表の際に審査する・される側だった)亀研究者の矢部 隆氏が寄稿(自然史,系統と分類,クサガメについて,飼育について)していることで,内容に深みも出ているように思います。
 ミドリガメの帰化動物としての面を知りたいのなら,
(7) 「帰化動物のはなし」(*28)
 中村一恵 著,技報堂出版,1994年1月発行,1800円(税別),ISBN4-7655-4401-X。
がオススメです。(2)(3)と併読することで,米国から日本へのミドリガメの流れの歴史が見えてきます。さらに,過去の新聞記事を検索したり図書館で縮刷版を探したりしても,面白いことがわかるかもしれません。

 餌について最も詳しいのが
(8) 「爬虫両生類飼育図鑑  カメ・トカゲ・イモリ・カエルの飼い方」(*22)
 千石正一 著,株式会社マリン企画,1996年9月 5刷発行,2718円(税別),ISBN4-89512-322-7。
です。A4版のもともと大きな本なのですが,餌だけで10ページにわたって記載されています。これに
(9) 「四訂食品成分表」(*18)
 香川 綾 監修,女子栄養大学出版部,1983年1月発行,500円。科学技術庁資源調査会 編 四訂日本食品標準成分表 収載。
を合わせれば,ビタミンや蛋白質,脂肪の含有量等,かなり詳しく知ることができます。もっとも(9)は人間用ですので,メダカやミルワーム等の成分は載ってませんし,骨等除いてあったりするので(ふつう生餌は丸ごと与える),注意は必要です。また,野菜が市場原理優先のため,栄養素,とくにビタミン類が昔の数分の1に減少している,ということで,現在,改訂作業が進行中のはずです。スーパー等から買った野菜を与える際は,そういったことにも気を付けた方がよいかもしれません。

 設備,器材類が詳しいのが,(8)と
(10)「爬虫類・両生類200種図鑑」(*20)
 文:菅野 宏文,写真:内山りゅう,水越 秀宏,株式会社ピーシーズ,1997年11月発行,2286円(税別),ISBN4-938780-23-2。
で,(10)にはフィルターこそ載ってませんが,他の器材,水槽(ケージ),保温器具,フルスペクトルライト,床材,温度計・湿度計・タイマー,レイアウトグッズ(甲羅干し用の小島),等が写真入りで解説されています。ただし,記述そのものは(8)の方が詳しいところもあるので,併用すると良いかもしれません。水草は扱ってないが陸上用の植物,餌,等の写真も豊富。

 亀についての雑学知識を仕入れるには
(11)「カラー図鑑 カメのすべて」(*1)
 高橋 泉 著,成美堂出版,1997年9月発行,1200円(税別),ISBN4-415-08561-X。
がよいかもしれません。亀が出てくる世界の民話や映画,亀の切手,亀のコイン,日本の伝統工芸べっ甲細工,亀甲占い(亀卜),亀の料理や亀伝説,亀の居る日本の動物園・博物館のリスト等,非常に豊富。

 全般的にバランスの取れた飼育入門書としては,
(12)「カメの医・食・住」(*2)
 徳永卓也 著,千石正一 監修,株式会社どうぶつ出版,1996年8月初版発行,1437円(税別),ISBN4-924603-32-5。
がよいかもしれません。ミシシッピーアカミミガメの成長課程(どのくらいの期間でどれだけ大きくなるか)はこの本が一番詳しいです。イラストもいい味出しています。

 亀たちの一大イベントやコンテストをみたいのなら
(13)「カメカメフェスタ 1st. November,1996記念版 カメの本」(*4)
 加藤 進 スーパーバイザー,和知 優介 チーフエディター,安西 広幸,吉岡 幸子 編,木村 浩 写真&アドバイザー,他,株式会社リアルエステイト研究所,1997年9月発行,2800円(税込),ISBN4-947708-08-5。
がオススメ。他,ビタミンD3の正しい合成・利用経路の話や,亀の写真の撮りかたのコツ,そして何より「爬虫類診療病医院 全国リスト」が掲載されているのが役立つかもしれません。

 生物についての様々な事柄を調べるのに,高校生用ではありますが
(14) 「旺文社 生物事典 改訂新版」(*19)
 江原 有信,市原 俊英 監修,旺文社,1994年9月改訂新版発行,1997年重版発行,1456円(税別),ISBN4-01-075109-6。
も便利です。尿成分や生物濾過(硝化細菌)等,いろいろヒントを得られます。

(15) 「理科年表」(*25)
 東京天文台 編纂,丸善株式会社
も,ガラスの紫外線透過率を調べたり(昭和59年版),自然環境における温度を調べたりするのに使えます。
 他の亀用の本としては
(16)「世界のカメ」(*30)
 加藤 進 著,(株)クリーンクリエイティブ,1992年7月第1刷発行,1995年6月第5刷発行,3104円(税別)
(17)「世界のカメ II 飼育・繁殖のすべて」(*21)
 加藤 進 著,(株)クリーンクリエイティブ,1994年6月初版発行,1995年3月2刷発行,3495円(税別)
(18)「T.F.H.飼い方マニュアル I カメ」(*15)
 JOHN COBORN 著,志村 真紀 訳,株式会社リアルエステイト研究所,2622円(税別),ISBN4-947708-00-X。
(19)「テトラ カメの飼い方」(*12)
 ワーナー・ランバート株式会社 テトラ事業本部のカタログ。
(20)「呼べばくる亀 ~亀,心理学に出会う」(*9)
 中村陽吉 著,誠信書房,1991年2月第1刷発行,1991年5月第2刷発行,1602円(税別),ISBN4-414-30322-2。
等があります。(4)(16)(17)は3部作で,図鑑として完成させるなら3冊あると良いでしょう。(17)には,「理科年表」を利用して自然環境下での気候(とくに温度)を調べる手法や,水質測定の話,等の興味深い話が載っています。もっとも水質測定やフィルターの話については
(21)「テトラの水質テストキット 水質測定方法」(*24)
 ワーナー・ランバート株式会社 テトラ事業本部のカタログ
(22)「テトラ フィルターシステム」(*27)
 ワーナー・ランバート株式会社 テトラ事業本部のカタログ
も商品カタログとはいえ,相当詳しいです。(19)(21)(22)はペットショップや葉書等の注文で無料で入手することが出来ます。(20)は読み物として興味深いですが,第2刷以降を入手された方は最後に涙することになるでしょう。

 亀専用ではありませんが,亀を含めた爬虫類全般の飼育書としては
(21)「カラー・ガイド・ブック 爬虫類クラブ  爬虫類&両生類の飼い方」(*10)
 長坂 拓也 著,内山りゅう 写真,誠文堂新光社,1994年12月発行,1456円(税別),ISBN4-416-79427-4。
もあります。痩せた個体の見分け方は参考になりました。
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【41】病気とその対処法について教えてください。

 以下に一般例と対処法を示します(*2)(*3)(*6)(*16)。が,正しい診断と治療は専門の獣医さんが一番詳しいので,それをお忘れなく。病気とその対処法は,「世界のカメ III 分類と病気」(*16),「新版 カメの飼育ガイドブック」(トータス・トラスト公認,増補改訂版)(*6)がとくに詳しいので,この2冊を入手して手元に置いておくと良いでしょう

(1) 水に沈むことが出来ない
 痩せすぎの可能性。食欲がない場合は,餌や環境(水温,ホットスポット,同時飼育数)等の見直し,あるいは病気の可能性を疑ってみます。

(2) 体を傾けて泳ぐ
 呼吸器系の病気。肺でバランスをうまく取れない。肺炎の初期兆候等の可能性大で獣医さんに診てもらうのがよいのですが,餌や環境(水温,ホットスポット,同時飼育数)等の改善による体力向上で乗り切れる可能性もないとも言い切れません。(ウチの亀がそうでした。)

(3) クシャミやぜいぜい言う
 呼吸器系の病気(肺炎等)で重傷。一刻も早く獣医さんに見てもらうのがよいでしょう。水槽内をふだんより2~3度C高めに保つ(25~30度C,あるいは30~34度Cとも)。夜間もスポットライトをつけっぱなしにして温度を保つ。35~36度C,一日10~15分前後の温浴で新陳代謝の活発化をはかる。食欲が極端に低下している場合は,流動食にして差し餌(強制食餌。一日に1~2回。窒息に注意)する。等ですが,獣医さんの指示に従ってください。注射したり,飲み薬を渡されることもあります。

(4) 甲羅が柔らかい
 クル病。カルシウム,ビタミンD3(日光浴で生成)の不足。ガラス越しの日光浴の場合は効果が薄いので,なるべく直射日光を。その場合,日射病や外敵に注意(影の出来る部分を設ける。温度の上がりすぎに注意。金網等で鳥や猫対策)。室内飼育の場合紫外線を出す光源(フルスペクトルライト)を使ったり,あるいは今まで使用していたライトが寿命になっていないかどうか(可視光は出ていても紫外部が出なくなっている可能性あり),距離が充分近いか(光量は距離の2乗で減衰する)確認します。最近の餌や亀用のビタミン剤で,ビタミンD3を含有しているものがあるので,過剰摂取に気をつけつつも適量投与するのもよいでしょう。ビタミンD3だけでなく,カルシウムを多く含む食品の摂取も当然重要です。カルシウム・リン比率は1.5~2:1と言われていますので,この点にも注意が必要です(犬や猫等の哺乳類は1.2:1)。幼体は甲羅が薄くて柔らか目ですので,見極めはやや難しいところがあります。

(5) 目がはれている
 ビタミンAの不足。または不潔による細菌の感染症。ビタミンA不足時は,市販薬品が販売されていますので,餌に混ぜると同時に,目に点滴することで対処できます。感染症の場合は,獣医さんに見てもらい,目薬(抗生物質を含む軟膏,他)をもらうのがよいでしょう。耳の腫瘍と関連して目がはれることもあります。

(6) 皮膚(首筋,手足)に白い斑点がある
 水カビ(真菌)や細菌等の感染症。人間向けのうがい薬のイソジンガーグルを薄めて塗って消毒したり,クロロマイセチン軟膏等の抗生物質軟膏や抗真菌剤を使い,なるべく乾燥させます(数時間から1日程度水から離します。冬場等保温に気をつけ,環境や亀の体力に問題があるようなら様子を見て判断します)。膿んだ場合は切開手術が必要になるかもしれません。水替えを充分にし清潔を保つようにするのは基本です。フルスペクトルライト等紫外線の殺菌効果も有効な場合があります。

(7) 皮がめくれている
 むけた後が綺麗なら正常な脱皮。変なら感染症やビタミンA欠乏症の疑いがあります。対処法は(5)(6)と同様です。

(8) 甲羅の境目が茶白色で腐食しているみたい
 感染症の疑い。もっとも甲羅の正常な成長の可能性もあります。その場合,甲板の間が成長するような形で甲羅が大きくなっていくのですが,最初のような緑色よりは黒っぽい色のことが多くなります(黒化。メラニズム)。感染症(シェルロット)の場合の対処法は(6)と同様です。甲羅から液状のものがしみだしているような場合は重傷で,獣医さんに診てもらうのがよいでしょう。予防策として,清潔は当然ですが,甲羅を傷つける可能性のあるものを水槽内に置かない,水替時等甲羅も軽く磨いてやる,等があります。また,他の亀にも感染しやすいので,発病後は隔離します。

(9) エサを食べない
 餌にあきたり,温度(水温)が低く食欲がおきなかったり,複数飼育時は弱い個体が受けるストレスが理由だったりしますので餌や飼育環境を見直してみてください。当然,病気の場合もありえますので,こちらもチェックします(視力低下による食欲低下,耳の腫瘍による食欲低下,口内感染症,他)。産卵前(無精卵)も,卵を体内に抱えているため,食欲がなくなりました。

(10)消化不良,下痢,軟便
 消化不良の場合,水温やホットスポット下の温度を上げることによる体温上昇で消化促進の効果がえられる場合があります。下痢,軟便が続く場合,寄生虫(アメーバ含む)の可能性があります。犬猫用の駆虫剤は亀に対しては危険な場合があるとのことで注意が必要です。メトロニダゾール系(商品名フラジール),フェンベンダゾール系(商品名パナキュア),オクスフェンダゾール系(商品名シナシック)といった駆虫剤の名前が挙がっていますが,できれば,獣医さんに診てもらった方がよいのではないでしょうか。糞尿のサンプルを元に検査してもらうことで診断が確かなものになるでしょう。

(11) 口がはれている
 口内感染症(マウスロット,口腐れ病)の可能性があります。壊死性で,口内にスポンジ状チーズ状のものが付着したり,歯肉や舌が暗赤紫色になったりします。バクテリアやウイルス性で感染しやすく隔離が必要です。綿棒等で感染部位を除くと共にイソジンガーグルを薄めて塗って消毒したり,抗生物質軟膏を使用したりしますが,まずは獣医さんに診てもらった方がよいでしょう。

(12)その他
 四肢関節の腫れ(腫瘍,関節炎),骨折,かみ傷・ひっかき傷,甲羅の外傷・破損,鼻水症候群,黄疸,貧血症,火傷,薬品中毒,水難事故,敗血症,甲の変形,嘴や爪の成長障害,歩行困難(四肢の麻痺),胃炎,尿路結石,卵停滞,冬眠後遺症(神経系,眼の視力低下),等,様々な病気・症例がありますが,すべてを紹介する訳にはいきませんので,やはり上記の本をあたってみてください。
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【42】水は水道水を使えますか? カルキ抜きが必要でしょうか?

 魚類・両生類等の小型水棲動物,とくにエラ呼吸の場合,消毒用に水道水に追加している塩素の影響をもろに受けてしまいますので,俗に言う「カルキ抜き」が必要になります。基本的に肺呼吸の爬虫類である亀,とくに粘膜でも補助的に呼吸を行う半水棲の亀の場合はどうなのか,という問題ですね。やはりこれにも諸説あります。

(a) カルキ抜きを必要とする立場のもの
 「テトラ カメの飼い方」(*12)がそうで,自社製品を勧めています。

(b) カルキ抜き不要(水道水そのまま使える)の立場のもの
 「ミドリガメの飼い方」(*3)や「T.F.H.飼い方マニュアル I カメ」(*15)がそうです。なお,ミドリガメではなく,ニホンイシガメのように皮膚病にかかりやすい亀の場合はカルキ抜きを勧めています。
 カルキ抜きの方法としては,
  (a) 市販の薬品を使う(チオ硫酸ナトリウム,他)
  (b) 水を汲み置き数時間ないしは1日放置する。1日天日にさらす
といった方法が紹介されています(*3)(*12)(*15)。また,水道水でなく雨水をためて使う方法を紹介している本もあります(*15)。
 意外に,カルキ抜きについて書いていない本が多いのですが,思うに
(1) 亀は排泄物が多く,また,餌を食べ散らかすため,すぐに水が汚れる。したがって,水中の塩素はすぐに消費されてしまう。
(2) ミドリガメのような半水棲の亀の場合,水位はそれほど深くしないのが普通。したがって,水の容積に対し蒸発(揮発)する面積の割合が普通の熱帯魚飼育の場合より大きいことになり,塩素ガスが自然に抜け易い。
(3) 亀が水の表面で泳いだり,エアーポンプを使ってエアレーションしているような場合,空気の泡が水と接触する割合が増えるため,塩素ガスが抜け易い。(化学の実験で,水中の酸素を抜くために数時間純窒素ガスを通すのと同じ原理)
(4) 気体は一般に温度が高くなるほど水に溶け難くなる。冬場,水中ヒーターを使って加温しているような場合,局所的な加熱(沸騰)等で塩素ガスが抜ける。
といったようなことで,問題にならないのではないでしょうか。もちろん何にまして(1)の汚れやすいという問題が一番大きく効くように思います。

私自身は,金魚が亀と同居している関係上,水質は金魚の様子でチェックできています。体重2亀合わせて3.6キロの亀が80リットル前後の水槽に居る訳ですが(エアリフト式フィルター2個あり),水替え8割でカルキ抜きしなくても金魚はへっちゃらです。
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【43】噛みつかれてしまいました(イタタ)。どうしたらよいでしょうか?

 噛みつかれないようにするのが一番(不用意に亀の前に指を出さない)なのですが,うっかり噛みつかれてしまった場合には・・・,これまた,記述のある飼育書は少ないようです。「うちのカメ オサムシの先生カメと暮らす」(*8)に,「噛まれた時はあわてて引っぱったりしないで,なるべく早く水槽や池などの水の中に沈めるとよい。」とありますが,それでも一向に離れてくれなかった,といった体験談が寄せられていたりします(ニフティ ペットフォーラム「甲羅同盟」会議室)。結局,手足を押し込んだり,頭を撫でたりして,ようやく離れた,とのことです。「うちのカメ」には叱ったり,口を開けて近寄ってきたときにピンセットで威嚇した,といった話も載ってますが(カメコは以降,二度と噛み付くことはなかった,とのこと),亀との信頼関係を壊さずに駄目だと教えるうまいやり方については,私も知りたいところです。
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【44】ミドリガメって悪者ですか?

 ミドリガメことミシシッピーアカミミガメ(ヌマガメ科スライダー属アカミミガメの亜種)は,もともと日本の亀ではありません。以下のような経緯をたどって日本に輸入,帰化してしまった外国産の亀です(*14)(*28)。(この辺の歴史は後日もっと詳しく調べてあり,別途紹介いたします。)

・1910~1920年代:アメリカ ルイジアナ州を中心に生物教材・ペットとしての爬虫類・両生類の養殖が産業として定着。
・1955年頃:日本に輸入開始。
・1966年:コロンビアクジャクガメ(スライダー属アカミミガメの亜種)が,テレビ・コマーシャルでチョコレートの景品「アマゾンのミドリガメ」として紹介され,有名になる。
・1970年代:東京不忍池で野性化目立つようになる。
・1970年初頭:子供のサルモネラ菌感染の元凶とされる。のべ25万件を記録。
・1975年:米国食品医薬品局(FDA),合衆国国境を越えた亀の幼体の輸入禁止,合衆国国内での販売に制限(10cm未満の全ての水棲ガメの販売禁止)。輸出は規制せず。カナダも追従。
・1980年代:全国的に野生化の報告例増える。
・1983年:ニューオリンズ空港からの輸出量の内訳は,総数約170万匹中,日本が86万匹でトップ。2位がフランスで28万匹。

 現在では,北海道から沖縄まで日本全国に見られる亀になっています。また,ルイジアナ州の海外輸出を目的とした養殖場も健在で,合衆国から海外への輸出量は年400万匹,日本への輸入は100万匹以上との見積もりもあります(*14)(*28)。受精卵を低温で保存し孵化日をコントロールしたり孵化した幼体を低温保存して成長をおさえるような「商品」としての管理が徹底されている種でもあります(*28)。
 さて,これだけ輸入・帰化・定着してしまいますと,当然ながら,在来種との競合が問題になってきます。南アフリカではミドリガメを捨てる人を犯罪者として処罰する事態になっているほどです(*2)。日本では,ニホンイシガメ,クサガメが住処を追われるとして,ミドリガメを敵視しているものが多いです。(もっとも,クサガメも本来関西に多い亀で戦後東京の縁日で第二の「ゼニガメ」(ミドリガメと同様の商品名)として売られる等で普及した,との見方もあります(*28)が,それを問題にしている本は何故かあまり無いようです。)
 どのくらい悪者扱いされているか,というと,
(a) 「ワニから逃げやすいように四肢の筋肉が発達しているミシシッピーアカミミガメは,甲羅干しのときにも,クサガメやイシガメを押し退けてしまう」(*1)
といったものから
(b)「他の動物を食い荒らすギャング」「土着の生き物を踏み台にして食い荒らしてどんどん繁殖し,帰化動物として猛威を振い始める」(*20)
(c) 「在来種のニホンイシガメ,クサガメの卵や幼体を食べてしまうなどして,生態系を破壊」(*2)
といった,ちょっと信じられない記述まであります。イタチやモグラじゃあるまいし,ヌマガメが積極的に穴を掘って捕食するとは信じ難いし,雑食とはいえ,亀の幼体を手軽に食べられるほどミシシッピーアカミミガメの成体のサイズが極端に大きくなる訳でもないと思うのですが・・・。ギャング云々に至ってはピラニアみたいに大勢で襲ったり,ワカサギやエビを全滅させて漁業に影響を与えているブラックバスみたいなイメージがありますが,ちょっと違うような・・・。
 亀の研究保護団体「トータス・トラスト」(イギリス ロンドンに本部有り)には附属機関に,24時間体制で亀の診察を受け付けてくれる病院や保護地区があり,1995年には,保護されたミシシッピーアカミミガメたちのための新しい池が完成した,とのことです(*6)。いたずらに帰化動物を敵視することなく,本来海を越える能力のないヌマガメを国を越えて普及させてしまった現実を見据え,きちんとした対応を行う方向にもっていってやりたいものです。帰化生物は何もミドリガメに限らず,ザリガニやスズメ,モンシロチョウ,アオマツムシ,植物では,ツユクサ,イヌタデ,セリ等,他にも沢山の生物がいるのですし・・・。(もっとも,チャバネゴキブリ,アメリカシロヒトリ,等とは出来ればお付き合いしたくありませんが。)
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参考文献
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
*1)「カラー図鑑 カメのすべて」。高橋 泉 著,成美堂出版,1997年9月発行,1200円(税別),ISBN4-415-08561-X。
*2)「カメの医・食・住」。徳永卓也 著,千石正一 監修,株式会社どうぶつ出版,1996年8月初版発行,1437円(税別),ISBN4-924603-32-5。
*3)「ミドリガメの飼い方 ~水生ガメの飼育と繁殖~」。樋口 守 著,香柏社,1996年12月初版発行,1554円(税別),ISBN4-88144-302-X。
*4)「カメカメフェスタ 1st. November,1996記念版 カメの本」。加藤 進 スーパーバイザー,和知 優介 チーフエディター,安西 広幸,吉岡 幸子 編,木村 浩 写真&アドバイザー,他,株式会社リアルエステイト研究所,1997年9月発行,2800円(税込),ISBN4-947708-08-5。
*5)「T.F.H.飼い方マニュアルIV スライダーガメ」。JORDAN PATTERSON 著,志村 真紀 訳,株式会社リアルエステイト研究所,原著は1994年のCopyright,2331円(税別),ISBN4-947708-03-4。
*6)「新版 カメの飼育ガイドブック」(トータス・トラスト公認,増補改訂版)。A.C.ハイフィールド 著,日向野ブレンダ 訳,真菜書房,1997年4月初版発行,2200円(税別),ISBN4-916074-11-4。
*7)「NHK出版 生活実用シリーズ 生き物たちと楽しく暮らす コンパニオン アニマル」 内藤 正明 編,日本放送出版協会,1997年11月発行,800円(税別),ISBN4-14-187742-5。
*8)「うちのカメ オサムシの先生カメと暮らす」 石川 良輔 著,八坂書房,1994年4月初版第1刷発行,1997年8月第5刷発行,2000円(税別),ISBN4-89694-645-6。
*9)「呼べばくる亀 ~亀,心理学に出会う」 中村陽吉 著,誠信書房,1991年2月第1刷発行,1991年5月第2刷発行,1602円(税別),ISBN4-414-30322-2。
*10)「カラー・ガイド・ブック 爬虫類クラブ  爬虫類&両生類の飼い方」 長坂 拓也 著,内山りゅう 写真,誠文堂新光社,1994年12月発行,1456円(税別),ISBN4-416-79427-4。
*11)「カメの飼い方」 クレーンゲームのカプセルに付属の説明書。1枚ピラ。著者,会社等の記載なし。
*12)「テトラ カメの飼い方」 ワーナー・ランバート株式会社 テトラ事業本部のカタログ。1994年3月版
  及び1996年6月版。
*13)「動物大百科 第12巻 両生・爬虫類」 T.R.ハリディ/K.アドラー 編,平凡社,1987年2月発行,2800円,ISBN4-582-54512-2。
*14)「T.F.H.飼い方マニュアルVI クーター類・スライダー類・ニシキガメ」。 JERRY G.WALLS 著,畑 佳子 訳,株式会社リアルエステイト研究所,1997年8月初版発行,原著は1996年のCopyright,2286円(税別),ISBN4-947708-05-0。
*15)「T.F.H.飼い方マニュアル I カメ」。JOHN COBORN 著,志村 真紀 訳,株式会社リアルエステイト研究所,2622円(税別),ISBN4-947708-00-X。
*16)「世界のカメ III 分類と病気」。加藤 進 著(病気の項:高橋 功 著),(株)クリーンクリエイティブ,1996年5月初版発行,3800円(税込)
*17)「TRUE-LITE(トルーライト)」広告ページ。米国光源メーカー DURO-TEST社製。日本総発売元:株式会社マルトキによる広告。「世界のカメ III 分類と病気」(*16)に掲載。
*18)「四訂食品成分表」。香川 綾 監修,女子栄養大学出版部,1983年1月発行,500円。科学技術庁資源調査会 編 四訂日本食品標準成分表 収載。
*19)「旺文社 生物事典 改訂新版」。江原 有信,市原 俊英 監修,旺文社,1994年9月改訂新版発行,1997年重版発行,1456円(税別),ISBN4-01-075109-6。
*20)「爬虫類・両生類200種図鑑」。文:菅野 宏文,写真:内山りゅう,水越 秀宏,株式会社ピーシーズ,1997年11月発行,2286円(税別),ISBN4-938780-23-2。
*21)「世界のカメ II 飼育・繁殖のすべて」。加藤 進 著,(株)クリーンクリエイティブ,1994年6月初版発行,1995年3月2刷発行,3495円(税別)
*22)「爬虫両生類飼育図鑑  カメ・トカゲ・イモリ・カエルの飼い方」。千石正一 著,株式会社マリン企画,1996年9月 5刷発行,2718円(税別),ISBN4-89512-322-7。
*23)「ZOOM UP HANDS」Vol.7。東急ハンズ新宿店のちらし。「ハンズなら『ある』 バリエーション豊かな電球・管球」の題のカタログ。1997年11月14日版。
*24)「テトラの水質テストキット 水質測定方法」。ワーナー・ランバート株式会社 テトラ事業本部のカタログ。1995年12月版。
*25)「理科年表 昭和59年」。東京天文台 編纂,丸善株式会社,1983年11月 発行,980円。
*26)「広辞苑 第三版」。新村 出 編,岩波書店,1983年12月第三版第1刷発行, 1986年10月第三版第4刷発行,5800円,ISBN4-00-080001-9。
*27)「テトラ フィルターシステム」。ワーナー・ランバート株式会社 テトラ事業本部のカタログ。1995年12月版。
*28)「帰化動物のはなし」。中村一恵 著,技報堂出版,1994年1月発行,1800円(税別),ISBN4-7655-4401-X。
*29)「ミドリガメ症候群(シンドローム)」。新井 千裕 著,扶桑社,1990年4月 発行,971円(税別),ISBN4-594-00573-X。
*30)「世界のカメ」。加藤 進 著,(株)クリーンクリエイティブ,1992年7月第1刷 発行,1995年6月第5刷発行,3104円(税別)
*31)「吾輩は亀である 名前はもうある」。冬目隆石/筆耕人 大石隆一,双葉社,1995年2月第1刷発行,1262円(税別),ISBN4-575-28419-X。

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